朝日新聞がビートルズ世代に贈る、こだわりエンターテインメントサイト

メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ホーム設定

Special Contents ひと

  • インタビュー
  • フロントランナー
  • トップ
  • 地球発
  • マネー
  • ライフスタイル
  • 極める
  • からだプラス
  • エンタメ

記事を印刷

ライフスタイル

  • バックナンバー

シンプルライフ

Vol.39 子供とふれあう「絵画教室」で創作の楽しさを伝える 出店久夫さんを訪ねて

  • ページ1
  • ページ2
  • ページ3

教える日々の中で自分自身の作品も変化

写真
こ作品は独自の技法を使ったコラージュ

教室をはじめたころ、出店さんが描いていたのはクラシックな油絵が中心だったそうだ。でも、そうした技法を教えても、小さな子供にとってはおもしろいはずはない。絵の描き方など、むしろ教えないほうがいいんじゃないか。まずは表現することの楽しさにふれてほしい。そこで、切ったり張ったり、立体を作ったり、あらゆる素材やモチーフを自由に用いていく現代アート的な手法を採り入れていった。ものを完成させるのを目的にするのではなく、完成までのプロセスを、手で考え、手で覚えてもらいたいと思った。

とはいっても、就学前の子供とつきあうのは初めてで、まるで勝手がわからない。一緒にお昼ご飯を食べ、教室でのふとん敷きを手伝うところからのスタートだ。やがて出店さん夫婦にも娘と息子が生まれ、「子供の世界」が少しずつわかるようになっていった。

園児たちが喜んでくれそうなアイデアを毎日考え続ける中、出店さん自身の作品も変わっていった。絵筆を持つだけの制作には飽きたらず、仕事で熟知してきた「写真」を素材にするようになったのだ。

写真
室内の一角には若い日と現在の作が並ぶ

手元には、ヨーロッパで撮ってきた多くのフィルムがある。暗室でさまざまに加工して焼き付ける技術はお手のものだ。引き伸ばしたモノクロ写真を切り張りして、この世のどこにもないシュールレアリスティックな情景を作りはじめた。でも、それだけでは単なるコラージュどまりだ。そこで、できあがったコラージュを下図に、油絵に展開してみた。すると、元の写真の持っていた力が失われていく。模索を続け、ついに行き着いたのが、加工した写真をコラージュし、それをまた撮って加工して……と、複雑な作業を何度も繰り返し、1枚の大きな写真作品に仕上げていくという技法だった。

完成した作品は、さまざまなモチーフが縦横に入り交じり、まるでイメージの迷宮のようだ。ルーブル美術館で撮った彫像、三浦半島の海、保育園の遊具、子供たちの教材を考えながら作った粘土人形。一見しただけではそれとわからないものも、出店さんの説明を聞けばなるほどと納得がいく。

写真
ワークショップ用に鏡を使った教材も

「これは、僕自身の記憶の蓄積なんです。自分が生きてきた風景を積み上げていったもの」  写真の加工にコンピューターは使わない。切る、張る、撮る、焼き付ける……すべてが丹念な手の仕事だ。長年、教室で教えてきたことも、作品を構成する「記憶」の一部だ。教材として扱ったテーマを作品に応用することもあるし、子供たちの発想から刺激を受けることも多い。

ところで、あこがれた「優雅で文化的な暮らし」は実現したのだろうか。

「できませんでしたね。でも、大勢の子供たちと過ごし、自分の求めた作品を作る、今の暮らしが好きです」

若いころの仕事や偶然の出会いが、今の生き方につながる。無駄な寄り道など、振り返ればひとつもない。だから人生はおもしろい。

子供にも作れる
伝承遊具を応用した簡単工作
「竹弓のメリーゴーラウンド」

  1. 材料
    [材料]
    平竹ひご90センチ×2本、長い竹串、ストロー、フィルムケース2個、色紙2枚、白い厚紙、糊(のり)つきの発泡スチロール板2センチ角×2枚、たこ糸、ビニールテープ、モール4本、大きめのビーズ2個
  1. 1
    1. フィルムケースに穴をあけ、元にビーズをボンドでとめた竹串を通す。適当な長さに切ったストロー、発泡スチロール1枚(糊部を上にする)も通す。
  2. 2
    2. 色紙2枚を軽くはりあわせ、対角線に切り込みを入れてから竹串に刺す。もう1枚の発泡スチロールを、糊部を下にして張る。2センチのストローを通し、色紙の端を刺して風車状にする。
  3. 3
    3. 竹ひご2本をあわせ、両端にたこ糸を結んで軽くひっぱり、弓状にする。竹ひごにはビニールテープを巻いておく。
  4. 4
    4. 厚紙に好きな絵を描いて切り抜く。上部に穴をあけて、モールで風車の羽根にぶら下げておく。
  5. 5
    5. フィルムケースの間に、竹弓のたこ糸を一周巻き付ける。
  6. 6
    6. できあがり。下のフィルムケースを持ち、竹弓を動かすと、風車がクルクル回る。

PROFILE

出店 久夫(でみせ ひさお)

出店 久夫(でみせ ひさお)

1945年福井県生まれ。幼少期は毎日、海で遊んで育った。小学校2年の時、家族で京都に引っ越す。絵を描くのが好きで、中学時代から画家を志しはじめる。京都市立日吉ヶ丘高校美術コース(現在は京都市立銅駝美術工芸高等学校として独立)に進学。芸大をめざすがかなわず、印刷会社や現像所で写真の現像や修正の仕事に従事する。29歳でヨーロッパの美術をめぐる放浪旅へ。マドリードに落ち着き、1年半後に帰国。子供のための絵画教室を始める。埼玉県の陽明保育園で教室を担当して26年。ほか複数の保育園、幼稚園でも講師を務める。自身のフォトコラージュ作品では、個展・グループ展など多数。

  文  :秋川 ゆか
写真:伊田 淑乃

(更新日:2008年01月18日)

前のページへ
画面トップへ

※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。

©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。