一方、しおりさんがガーデニングをはじめたのは、義母のアドバイスがきっかけだった。
紘輝さんの母親は、花作り、野菜作りが得意。息子夫婦が新生活をはじめた建売住宅の、芝生が張られただけの庭を見て、数本の苗木を植えこみ、草花の育て方も教えてくれた。義母に聞き、好きな花を少しずつ増やしていくうち、殺風景だった庭がどんどん姿を変えていく。すっかり楽しくなった。
長男が誕生してからは、無農薬の新鮮な野菜を食べさせようと、近くに畑も借りた。こちらは、当初は紘輝さんが母親と一緒に担当。やがて紘輝さん1人で耕作を続けたが、仕事も多忙になり、都合15年ほど続けたところで、やめざるをえなかったという。
しおりさんの庭造りは続いた。20年前、家を建て替える時も、庭の眺めをゆったり楽しめるよう考えた。そして11年前からは、庭の主役は草花からバラへ。

「雑誌で見たバラの美しい家を訪ね、花が作り上げる風景のすごさに感動したんです」
それからというもの、一気にのめりこんだ。庭全体の印象を重視して、花の色は白、ピンク、オレンジ、赤。まっすぐ立つもの、たわわに枝を伸ばすもの、ツルになってアーチにからむもの。風景としてなじむ品種を選ぶうち、決して広いとはいえない庭を埋めるバラは、いつしか100本。花を通じた仲間は広がり、雑誌の取材も受けるようになった。

バラの開花は初夏と秋だが、植物の世話は一年中気が抜けない。4月末には消毒、咲けば花がら摘みや虫取り、夏は草花の手入れ、冬には剪定(せんてい)や追肥、鉢替え、芽接ぎ……。休めるのは春のいっときだけ。その間も、芽の伸びを見る。もちろん水やりも必要だ。
「泊まりがけの旅行には行けませんね。ふだんも、昼間はほとんど庭で過ごしています」
バラは眺めるだけの紘輝さんだが、庭の掃除は引き受ける。
「トゲがあるから、けっこう大変なんですよ」
グリークラブとバラの庭。まったく別の世界のようだが、2人の趣味には大きな接点もある。毎年5月、グリーのメンバーが鈴木家に集まる「バラを愛(め)でる会」だ。
「バラとアルコールを心から愛する仲間が、十数人ほど我が家にやってきて、しおりの手料理で飲み交わすんです」
01年から続く会は今年で8回目。夫婦で参加する人も多い。
丹精込めた花々が美しく咲きそろう季節ももうすぐだ。親しいグリー仲間が集えば、歌も出る。心地よいハーモニーと、甘く漂うバラの香りに浸るひととき、2人の積み上げてきた歴史は最上のもてなしに変わる。


しおりさんは、花を育てる以外にも、手を動かしてものを作ることが昔から好き。これまでレザークラフト、パッチワークなどに親しんできたそうだが、最近、夢中なのはポーセリンペインティング(磁器絵付け)。来客用ティーセットの繊細な絵柄にはかなり苦労したそうだ。また以前には、楽器を弾く息子のためにバイオリンまで作ったとか。近所のプロに習って、板を削り、組み上げて何度もニスを塗り、2年半をかけたという。もちろん、ちゃんと音が出る。今も息子の手元にあるそうだ。

鈴木紘輝(すずき ひろてる)・しおり
紘輝さんは1943年東京都生まれ。警察署長だった父の転勤にともない、東京各地の官舎を移り住みながら育った。早稲田大学政治経済学部に入学し、グリークラブに所属。卒業後もOBが集まって歌う機会が多かった。後輩らが主催した30年目の送別演奏会を機に、仲間と一緒に本格的な演奏活動を再開。東京信用保証協会を退職後は、皆で結成した「倶楽部グリー」の事務局長を務める。しおりさんは47年東京生まれ。就職した先で、同期だった紘輝さんと出会った。73年に結婚、庭造りが趣味に。今ではガーデニング仲間は全国に広がる。

ハーバード大学のア・カペラ合唱団の中で最も古い歴史を持ち、その優れた音楽性とセンスあるパフォーマンスで世界的に知られる「クロコディロス」の東京公演。主催する倶楽部グリーも、賛助出演としてステージに立つ。
2008年6月20日(金) 18:20〜
会場・国立オリンピック記念青少年総合センター大ホール
申し込み・問い合わせは、下記HP内「クロコディロスチケット注文フォーム」から
文 :秋川 ゆか
写真:伊田 淑乃
(更新日:2008年04月11日)
※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。