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シンプルライフ

Vol.44 木工房を備えた高原の家で 8年目を迎えた「みそ作り」イベント 芝地正履さん・喜代子さんを訪ねて

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畑仕事や食品作りが季節ごとの楽しみに

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上が昨年仕込み、下が3年物のみそ

高原に暮らしはじめてからは、庭造りや畑仕事、保存食作りなども、夫婦の趣味として加わった。家具だけでない、生活全般をつくる楽しみだ。

みそ作りのスタートは、越して1年目。親しくなった移住者夫婦と4人で、ベテランの作り手を招いて教わったのがきっかけだった。

「本やネットにも作り方は出ているけれど、やっぱり地元の人にじかに教わらないと」

これが予想以上にうまくできた。さっそく畑で大豆を育て、翌年から自分たちで仕込むようになった。まさに言葉通りの手前みそだ。

「市販のみそは、高級品でも大豆とこうじは1対1。うちのはこうじもたっぷり使うし、大豆も自家製の純国産ですから、おいしくならないわけがない。塩も、自然海塩をいろいろ試して、シチリアの海塩に行き着きました」

普通は仕込んで半年で食べられるところを、じっくり1年寝かせる。たるから出したばかりのみそは色も淡く、穏やかな香り。3年も過ぎれば色も味も深みを増す。

「どちらもそれぞれにおいしいから、少しずつ残して保存し、料理によって使い分けています」

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大豆用の畑。今はタマネギと下仁田ねぎがある

保存食イベントは、みそ作り以外にもある。夏には、育てたイタリアントマトでトマトソースを作る。近くで買える無菌豚で、ソーセージ作りも楽しむ。そのたび、大勢の仲間がまた集まる。

畑は徐々に増えて、今では3カ所、計800坪の広さ。ごく安く借りたり、高齢になって農作業がきつくなった人からタダで引き受けたり。

「耕作しないと土壌がだめになりますから。使ってくれと言われて、今年から400坪を増やしました。つまり農業のプロに見込まれちゃったわけ。なかなかのものでしょう?」

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参加者たちにコーヒーを配る喜代子さん

冬の寒さの厳しい土地では、夏から秋が畑仕事の季節だ。育てるのは、大豆、トマトのほかタマネギ、にんにく、とうもろこし、なす、葉野菜……。木工で出たオガクスを鋤(す)き込んでいるという土は、ふかふかとやわらか。畝(うね)の間に立って眺めれば、正面に甲斐駒ケ岳や北岳の向こうに富士山の雄姿、振り返れば八ケ岳の山並み。鳥のさえずりが響き、雪どけ水の流れる音も耳に届く。

「最近は農業が忙しくて、木工にかける時間がなかなか確保できないんですよ」という正履さんだが、日々の充実は、都会暮らしだったころとは比べようもない。

話をうかがううちに、みそ作りも一段落。昼食を囲む時間だ。喜代子さんがこしらえたみそ汁が配られる。昨年、皆で仕込んだみその、いい香り。

「夏のトマトソースもおいしかったよね」

「そのうち、タマクラフトからタマフードに変わるかも」

仲間たちが軽口をたたきながら笑いあう。

デッキのひなたに座れば、木々を抜ける風も心地いい。高原の春が盛りを迎えるのももうすぐ。木工と農作業に精を出す日も近い。

こぼれ話…

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ガレージの奥に置かれたこの道具は、正履さんたちの農作業に欠かせないもの。昔ながらの脱穀機だ。手前下の金属棒を踏み込むと、ドラムが回る。大豆はさやがカラカラに枯れた状態で収穫し、茎を持ってドラムに乗せる。すると多数の針金部分があたって、豆が落ちていく仕組みだ。古い品をネットオークションで見つけ、傷んでいた木部は正履さんが作り直した。豆とさやなどのゴミを仕分ける唐箕、ゆでた大豆をミンチにする道具なども、皆、古道具屋で探したとか。みそ作りに、現代の電動器具は使わない。

PROFILE

芝地正履(しばち まさぶみ)・喜代子(きよこ)

芝地正履(しばち まさぶみ)・喜代子(きよこ)

正履さんは1941年東京都生まれ。小学生時代から模型飛行機作りが趣味だった。経済学部で学び、大学卒業後は旭化成に就職。模型飛行機の大会では世界各地に出向いた。45歳から木工をスタート。やがて木工雑誌「手づくり木工事典」の常任執筆者になる。92年に木工クラブ組織「TAMA CRAFT」を設立。作品は個展などでも発表する。98年に早期退職し、小淵沢の別荘を生活の場に。「TAMA CRAFT」工房も現地に移転した。喜代子さんは1942年静岡県生まれ。父の転勤で各地に生活し、東京の音大へ。学生時代に正履さんと知り合い、卒業を待って結婚。自宅でピアノ講師をしてきた。今は、好きな庭造りに励む日々。

TAMA CRAFTホームページは、http://tamacraft.com

  文  :秋川 ゆか
写真:山口 敏三

(更新日:2008年04月30日)

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