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山梨県北杜市の一角。南アルプスを望む高原の別荘地は、初夏ともなれば染みるほどの緑に包まれる。このエリアには不思議と、自分の趣味の時間を大切に過ごす大人たちが多い。陶芸や木工、庭造り、料理……。都内から高速で2時間ほどという距離感と、有名避暑地のにぎわいとは一線を画す落ち着いた環境のせいだろうか。
都心で開業する歯科医・黒崎哲也(てつや)さんが妻の裕美(ゆみ)さんとともに週末のひとときを送る別荘もまた、木立が囲む美しい道のほとりに、ふとあらわれる。
ヨーロッパのコテージを思わせる、白い外壁に赤い屋根の2階屋。建物の周囲には、枕木を敷き、草花やハーブを植えた庭がひろがる。ずっしりとした木の扉を開き、屋内へ。部屋の中は、いっそう徹底したイギリス風カントリースタイルだ。壁面は漆喰(しっくい)風の塗料で仕上げ、床はテラコッタ。見上げればごつごつとした太い梁(はり)も縦横に走る。家具はすべてアンティーク。壁にはパブミラー。部屋の中心には暖炉もある。

「この家は、自分でデザインしたんです。とにかくイギリスの古い物が好きで。照明器具やドアノブはネットで海外から取り寄せました」と哲也さん。
建築中も、可能な限り作業に参加した。
「断熱材も自分で入れたし壁も塗った。暖炉は業者の人と一緒に作ったし、靴箱や収納のドアも手製です」
暖炉に使う鉄製の薪受けは、溶接機を買って製作。そればかりか庭の造成までも、ブルドーザーとパワーショベルを借りて、自ら手掛けたのだそうだ。
「できあがるまでけっこう時間がかかってしまいましたが」

イギリスの伝統に惚(ほ)れ込み、思いのままに作り上げたこの別荘で、愛犬のパッチと遊び、庭仕事や木工に励み、ときには遠出しておいしいものを食べる。今はそれが2人の週末の楽しみ。ふだんは家事に忙しい裕美さんも、ここではゆっくり本を読んだり、手芸に没頭したり。こうして月に2、3度は訪れるのをならいにして、すでに8年になるという。
哲也さんのイギリス好きには、確かな動機がある。それが別荘の窓の外、庭の風景の一部のようにとめられた小さな車。モーガン4/4だ。イギリスで99年の歴史を持つファミリー企業モーガン・モーター・カンパニーで、1936年の発表以来、ハンドメードの伝統をもとに営々と作られ続けてきた愛らしいオープンカー。
ホワイトとグレーに塗り分けたツートーンカラーの車体はきわめて珍しい。
1983年に製造されたこの車のセカンドオーナーになったのは、18年前。しかし、憧(あこが)れ続けた日々はさらに長い。イギリス車への愛着こそが、哲也さんにとって、イギリスの文化への扉を開く大きなきっかけだったのだ。

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