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年5%運用を目指せ

女性の老後に向けての資産形成は、特に結婚している場合は、夫の協力が必要になってきます。

預金のように、元本割れのしない金融商品ならまだしも、投資信託などをはじめとする投資商品で運用する場合、多くの女性、特に専業主婦の方々は、夫に許可を求めるケースが多いのではないでしょうか。

これからの時代、預貯金だけで老後の資産を形成するのは、非常に困難です。ある程度、リスクを取った運用をする必要があります。ところが、資産運用に対する意識は、まだそれほど高まってはいません。

「退職後の備えとして貯蓄をしていますか?」という問いに対し、何もしていないという方が30%もいらっしゃいました。対して、投資をしている人が27%、投資はしていないけれども貯蓄はしているという人が38%です。前述したように、女性の高齢者でおひとり様が増える時代が来るのですから、貯蓄はしっかり行う必要があります。

ところで、実際に老後の生活資金として、いくら準備すればよいのでしょうか。ある程度のゴールが見えていないと、計画的に資産形成していくのは難しいですし、世間一般に流布されている「1億円以上必要」という情報に捕らわれてしまい、あまりのハードルの高さに貯蓄意欲が無くなってしまっている人もいるかも知れません。

これはあくまでも一例ですが、年金で毎月20万円確保でき、そこにこれまでの貯蓄から、月10万円を取り崩して上乗せするという形を取るとしましょう。この場合、60歳時点で3000万円の貯蓄があれば、ある程度、老後の資金計画が見えてきます。60歳から75歳までは、年平均5%の利回りで運用しつつも、毎月10万円ずつ取り崩していく、75歳以降はいっさい運用せずに毎月10万円ずつ取り崩していくという前提条件で計算すると、105歳までお金が続きます。

では、年平均5%の運用が可能かどうかという点ですが、少なくとも今の金利水準で、日本の預貯金のみで運用していては無理です。でも、これを国内外の株式と債券に、それぞれ4分の1ずつ資金分散して運用すると、過去15年間で年平均5%のリターンを実現しています。

ただし、この数字はリーマンショック前までのものです。100年に1度と言われるような大混乱にぶつからなければ、年平均5%のリターンは、実現可能な数字だと思います。また、リーマンショックによる大暴落を経た昨年12月を起点にして、過去15年間の年平均リターンを調べると、約3%でした。仮に60歳から年平均3%の利回りで運用したと仮定すると、さすがに105歳まで資金を持たせることは難しいのですが、それでも95歳までは大丈夫です。

またマネーマネジメントという観点からすると、お金の引き出し方にちょっとした工夫を加えるとよいでしょう。前出の事例は、毎月10万円というように、定額引き出しを前提にしていますが、これを定率引き出しにするのです。

たとえば、原資が3000万円だったら、毎月0.34%ずつ引き出すようにします。このように定率にすれば、運用の具合が悪い時は、引き出す額が少なくなります。もちろん、その分だけ多少、生活は苦しくなるでしょうが、運用が順調な時は、逆に引き出せる額が増えるので、それでよしとすることにしましょう。定率引き出しは、定額引き出しに比べると、原資を長持ちさせてくれます。

女性の老後と資産形成に関する5つの提案

資産運用は、若いうちから始めるに越したことはありません。若い頃の方が、より長期にわたって運用できるので、途中、今回のリーマンショックのような大暴落があったとしても、リカバリーするまで待つ時間的ゆとりがあります。

ただ、40代前後になると、住宅ローンや子供の教育資金がかかるので、資産運用なんて考えるゆとりはないという方もいらっしゃると思います。資産運用というと、何かまとまったお金でするものだという固定観念が強いのですが、決してそのようなことはありません。積み立てを利用することによって、月1万円から始められる投資のスタイルもあります。まずは、始められることから手を付けてみてはいかがでしょうか。

それと、今回の調査では、夫が亡くなった後、お金の面なども含めてどうするのかということを、夫と話し合ったことがあるという妻ほど、投資している人の比率が高いという分析結果もあり、非常に興味深く思いました。女性が、自分自身の老後のための資産形成に一歩踏み出すために、次の5つの提案をしたいと思います。

まず夫も含めて、誰かと老後や資産形成について話す機会を持つこと。前述したように、夫と話し合ったことがあるという妻ほど、投資している人の比率が高いという分析結果からも、それは自明です。

次に、自分名義で資産運用のための金融資産口座を持つこと。預貯金の口座ではなく、あくまでも資産運用のための口座です。

第三は自分の年金支給額を知ること。

第四が介護の実態を知ること。

第五は、働くことと資産運用の択一を避けること。特に専業主婦の方は、このわなにはまってしまいがちです。よく「いずれ働きに出るから資産運用なんてしなくても…」、という考えを持った方がいるのですが、この考えはやめましょう。いずれ働きに出るといっても、必ず雇用されるという保証はどこにもありません。正規社員になると、特にそのリスクが高まります。「いつか働くから」という気持ちで、資産運用をせずにいると、気がつけば働きに出られず、かといって資産運用もしていない、結果的にお金がたまらないという悪い方向にいく恐れがあります。再び働くとしても、資産運用は今らから始めましょうということを、声を大にして言いたいと思います。

そして、これは繰り返しになりますが、女性の老後の問題解決は、夫の協力があって初めて可能になるということを、特に結婚している男性は、肝に銘じておくべきです。平均的に、男性は女性よりも寿命が短いものですが、夫は自分が先に亡くなった後に、女性が取り残されるという現実から、目をそむけてはいけません。

世の男性陣にとって、あまり喜ばしい話ではありませんが、「自分が先に亡くなった後、妻が一人でも生きていけるだけの資産をつくるにはどうすればよいのか」ということを、機会を見つけて話し合うようにすることが大切です。

野尻哲史(のじり・さとし)

一橋大卒業後、国内外の証券会社調査部を経て、現在、フィデリティ退職・投資教育研究所所長を務める。日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。著書に『株式市場の「死」と「再生」』(経済法令研究会)、『投資力』(日経BP社)、『退職金は何もしないと消えていく』(講談社+α新書)などがある。

(更新日:2009年07月30日)

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