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オバマ大統領は、アメリカの景気を回復させるうえで、「輸出主導型の景気回復」ということを打ち出しました。
アメリカが輸出を促進させるためには、米ドルの水準が安いに越したことはありません。米ドルが安ければ、その分だけアメリカ製品の、海外市場における価格競争力が高まります。昨今、外国為替市場では米ドルの売り圧力が強まっていますが、アメリカの輸出主導による景気回復というシナリオが背後にあるからです。ただ、本当にアメリカが輸出主導で景気を回復させられるのかというと、それは疑問です。
確かに、08年から09年にかけてのアメリカ景気は、純輸出の増加によって景気の底割れを防いだかのように見えるのですが、これは純輸出が伸びたというよりも、輸入の落ち込みぶりがあまりにも早くて大きかったため、相対的に輸出が伸びているように見えただけなのです。
また2010年4〜6月期のGDP成長率は、実質ベースで1.6%のプラスと、かなり低い成長率に止まっていますが、これは純輸出が3%以上のマイナスになったためです。つまり、輸出はそれほど伸びていないが、輸入が増えたために貿易赤字が拡大した。これがGDP成長率を押し下げる結果になりました。
今のアメリカ経済は、アメリカ国内でモノを作り、それを輸出するという力がほとんどありませんから、輸出主導で景気回復を目指すということ自体が極めて難しいと、考えるのが自然です。むしろ、少しでも景気回復の兆しが見えると、輸入が増え貿易赤字がかさみます。オバマ大統領の「輸出主導型の景気拡大」という発言を、外国為替市場ではドル安容認と受け止め、実際、ドル売りにつながりましたが、むしろアメリカ経済の構造を考えた場合、ドルを高く維持して、輸入品を安く買えるようにしておいた方が、アメリカの国益にかなうのではないかと思います。
いずれにしても、今のアメリカが輸出主導の景気回復を目指すのは、かなりの無理があります。そのなかで、アメリカ経済が二番底をつけないようにするためには、多少、回りくどい方法ですが、たとえば担保割れ不動産を保有している個人に対する救済案を検討するといったことが、考えられるかもしれません。
個人消費の回復までには2〜3年、その間の住宅市況回復がポイント
前述したように、アメリカ経済はGDPの8割を個人消費が占めているような国ですから、景気回復を考えた場合、まずは個人消費が回復しなければ、どうにもならないわけです。
その個人消費が回復するためには、何よりも雇用の回復が必要であり、雇用が回復するためには、労働市場が流動性を取り戻す必要があります。そして、労働市場の流動性を回復するためには、住宅市況の回復がポイントになってきます。住宅市況が回復し、担保割れが無くなれば、再び人の移動も期待できるようになります。そうすれば、徐々にアメリカの雇用環境は改善され、個人消費の促進へとつながっていくはずです。
サブプライムローンショックとリーマンショックによって、個人の家計バランスシートは、徹底的に痛めつけられました。買った住宅の価格がどんどん値下がりする一方で、住宅ローンの残債がそっくり残ったまま、という状態にあります。おそらく、家計部門のバランスシート調整が完了するには、あと2〜3年必要になるでしょう。
その間、企業の設備投資がうまく改善すれば、景気の二番底は避けることができると思いますが、まだ何ともいえません。
ただ今後、住宅市況が改善する可能性はあります。なにしろ1年間で人口が300万人も増えている国なのですから、人が生活する以上、住宅は必要になります。住宅市況が回復しないまま、永遠に落ち込むということは考えられません。どこかの段階で、確実に住宅市況は改善します。
その意味でも、アメリカ経済の回復は、住宅市況がいつ回復軌道に向かうのかということにかかっているのだと思います。

双日総合研究所副所長、主任エコノミスト。1960年富山県生まれ。84年一橋大学卒、日商岩井(株)入社。米ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会代表幹事秘書・調査役などを経て企業エコノミストに。日商岩井とニチメンの合併を機に2004年から現職。
著書に「アメリカの論理」「1985年」(新潮新書)、「オバマは世界を救えるか」(新潮社)、「溜池通信 いかにもこれが経済」(日本経済新聞出版社)など。ウェブサイト「溜池通信」http://tameike.netを主宰。テレビ朝日「サンデープロジェクト」やテレビ東京「モーニングサテライト」などでコメンテーターを務める。

(更新日:2010年09月28日)







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