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リーマンショックから2年。一時は回復軌道に乗ったかに見えたアメリカ経済ですが、雇用の回復力は弱く、再び景気が後退局面へと向かう「二番底」の様相を呈してきました。オバマ大統領は、公共投資に予算を重点配分し何とか景気を浮揚させようと必死になっていますが、果たしてアメリカ経済は力強い回復へと向かうのでしょうか。双日総合研究所取締役副所長・主任エコノミストの吉崎達彦さんに、アメリカ経済の現状と今後の見通しなどについて、話を伺いました。
2010年は、アメリカ中間選挙の年です。大統領選挙に比べると、注目度は低いのですが、大統領に就任して2年が経過したオバマに対する評価が問われるという意味では、非常に注目度の高い中間選挙になりそうです。オバマの評価を下すうえで一番注目されるのは、やはりアメリカの景気がどうなるのかということでしょう。
オバマ大統領が当選したのは08年。ちょうど、リーマンショックの直後で、アメリカ経済はどん底に突き落とされた状態でした。そのなかで、8620億ドルもの大型景気刺激策を打ち出し、200万人の雇用を創出しようとしたわけですが、現状、雇用の回復力が極めて弱いというのが現実です。
確かに、8620億ドルの景気刺激策が打ち出されたことで、アメリカ経済は底割れを回避することができました。しかも、リーマンショックの影響で実質的に破綻(はたん)したゼネラル・モーターズ(GM)も、株式を再上場させられるところまでたどり着こうとしています。
わずか2年間で、ここまでのことが出来たわけですから、オバマ大統領の経済政策は、決して間違ったものではなかったと評価することができますが、私がちょっと引っ掛かっているのは、今回のアメリカの景気後退局面は、これまでとは少し様相が違うのではないかということです。
たとえば、これまでのアメリカの景気が回復していく過程では、必ずといって良いほど、雇用も回復していきました。ところが、昨年までの景気回復過程を見ていると、なぜか雇用の回復がはかばかしくありません。これが何を意味しているのかをちょっと考えてみましょう。
アメリカの労働市場は、非常に流動性が高いと評価されています。つまり、失業しても他に仕事を見つけることができる、あるいは転職をどんどん繰り返すことができるだけの受け皿があることが、アメリカ経済の強さの源泉でもありました。だからこそ「この街ではうまくいかなかったけれども、他の街で成功を収めてやろう」といった楽観さも持ち合わせることができました。
ところが、今回はどうも様相が違う。労働市場の流動性の高さと、それに依拠した楽観さが、全くもって見えてこないのです。
アメリカの失業率は、全体で9.6%前後、州別に見ると非常に大きな格差があることに気づくと思います。どのくらいの差があるのかというと、たとえばネバダ州の失業率は14%と極めて高いのに対し、ノースダコタ州ではたったの3.5%です。本来であれば、ネバダ州で仕事を失った人は、より雇用環境の良いノースダコタ州に移り住み、そこで仕事を見つけるという人の動きが見られるはずなのですが、今回は、そういう動きが全く見られません。ここにアメリカ経済の大きな問題が隠れているような気がします。
なぜ、人の移動が発生しないのか。私は、大きく二つの要因があると考えています。
第一が雇用形態の変化。今、アメリカの家庭では、共働きが当たり前になっており、共働きの率もどんどん上昇しています。夫婦のうち、いずれか片方だけが働いているのであれば、働いている人が他に引っ越そうとすれば、それに家族もついていくということになりやすいのですが、共働きということになると、なかなかそうも言っていられなくなります。
夫が他の州で仕事を見つけようと考えていたとしても、妻がフルタイムで働いており、しかもそこでのキャリアアップを目指しているというような状況だと、妻も夫とともに新天地に行き、また一から出直そうなどとは考えないでしょう。つまり、共働き世帯の増加という構造的な変化が、雇用の流動性を抑えていると考えることができます。
そしてもう一点、注意すべきことは、住宅価格の下落です。サブプライムローンショック、そしてリーマンショックを経て、アメリカの住宅価格は大幅に下落しました。当然、ローンを組み住宅を取得した人たちの住宅価格は、すでに担保価値を大きく割り込んでいます。かつてであれば、住宅価格がどんどん値上がりしていたので、持ち家を売却してもローンが残るということはありませんでした。
しかし、現在は住宅価格が担保割れの状態にあるため、どうしても残債が発生してしまいます。そのため、今の州では仕事がないからといって、家を手放して他の州に移り住むということが、難しくなっているのだと思います。
結果、今のアメリカの労働市場は、昔のように景気が回復軌道に乗るとともに、雇用も力強く回復をしていく、という景気と雇用の連鎖が期待しにくくなってきています。
しかし、アメリカ経済は、国内総生産(GDP)の8割を個人消費が占めている経済構造を持っています。個人消費が盛り上がるためには、何はともあれ雇用が大事ですから、雇用なき景気回復というのも、なかなか考えにくいのが現実です。そういった意味では、公共投資により景気を刺激させるのも大事ですが、その前に、担保割れ不動産を保有している個人をいかに救済するかという点を、しっかり考える必要がありそうです。









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