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賢いお金の知恵

澤上篤人さんに聞く 長期投資の王道は株式(下)

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個人が、長い目で見て資産形成を図っていく場合、どんな投資商品を選べばよいのか、将来的に高い成長が期待できるエマージング市場の可能性はどうか、外貨のリスクについてはどう考えればよいのかなど、長期投資に必要な知恵について、さわかみ投信代表取締役の澤上篤人さんに話をうかがいました。

エマージング市場に投資する前に日本の株式を買う

澤上篤人さん

中国やインドなどの新興国経済は、これからも高い成長率が期待されるでしょう。そのため、最近はこのような新興国の株式に直接投資する個人投資家も増えていると聞きます。個別銘柄への直接投資だけでなく、ファンドを通じての投資もかなり増えています。

でも、1月、2月に株価が大暴落したところで、果たしてエマージングファンドを買えた人はどのくらいいらっしゃるでしょうか。おそらく大半の人は、手も足も出ずに黙って成り行きを見ているだけという状態だったと思います。

エマージングマーケットの株価を見ていると、何度も急騰、暴落を繰り返しています。当然、暴落したところで買えれば、エマージングマーケットの投資もかなりのリターンは期待できますが、問題は、その時点で買える勇気がなかなか持てないことなのです。何しろ、エマージング国は、確かに高い成長は期待できますが、経済の基盤そのものが脆弱(ぜいじゃく)なので、そのままダメになってしまうケースも十分に考えられるからです。いざ投資しようと思っても、このようなリスクが脳裏をよぎった瞬間、投資しようという決断がなえてしまうのです。

でも、日本の会社であれば、ある程度、安心感を持って投資できます。

このように言うと、おそらくこのような反論をする人もいると思います。「日本はもう成熟国だから、将来の成長は期待できないのでは?」

確かに、日本という国だけを見れば、それは事実だと思います。でも、前述したように、日本経済自体はシュリンクしているかもしれませんが、世界経済は拡大の一途をたどっています。特に中国やインドなどのエマージング国は、リーマンショックによって大きく下げたところもありますが、それでも日本をはじめとする先進諸国に比べて高い経済成長率を維持しています。こういう国々に進出している日本企業の株式に投資すればよいのです。

エマージング国に進出している日本企業の株式を買えば、それだけで、そのような国々に分散投資しているのと同じ投資効果が得られます。

たとえば、日本の製造業で、エマージング国に工場進出をしている企業があったとしましょう。この企業の業績は、日本国内におけるビジネスの成果、日本の景気動向によって左右されるだけでなく、海外進出先であるエマージング国の景気動向にも左右されます。もし、日本の景気が悪かったとしても、エマージング国の景気が絶好調であれば、この会社の業績は底堅く推移するでしょう。株価もそれを反映して、大きく下落することはないと思います。つまり、この製造業の株式に投資するということは、エマージング国にも同時に投資しているのと同じ効果が期待できるのです。

そして、何よりも日本企業の株式であれば、大きく株価が下げた時、エマージング国のファンドなどに比べれば、土地勘のようなものがあるぶんだけ、安心して投資することができます。確かにエマージング国の株式市場への直接投資や、ファンドを通じての投資は大きなリターンが期待できるかもしれませんが、投資のやりにくさなどを考えると、日本企業の株式による代替投資でも、十分なリターンは期待できるはずです。

長期投資は株式で

投資をするにしても、さまざまな投資対象があります。株式やそれを組み入れて運用する投資信託、ここ数年はやっている外債ファンド、外貨、コモディティなどがそれですが、長期投資をする場合、どれを選ぶのが適切でしょうか。

これについては株式、もしくはそれを組み入れて運用する投資信託だと思います。そして前述したように、株式は日本株に投資すれば十分です。

米国のウォートンスクールで教鞭(きょうべん)をとっているシーゲル教授の研究によると、過去200年間にさかのぼった際の株式のパフォーマンスは、年平均で6.8%だそうです。これは面白いことに、世界のインフレ率が10%だとすると、株式のパフォーマンスは16.8%で、インフレ率を差し引いた実質のリターンは6.8%、インフレ率が2%の時の株式のパフォーマンスは8.8%で、やはりインフレ率を差し引いた実質のリターンは6.8%になります。つまり株式に投資してさえおけば、インフレリスクは十分にヘッジできるとともに、常に年平均で6.8%の超過リターンが得られるのです。

これに対して債券のリターンは、年平均で1%程度です。両者を比較した場合、株式投資の効率のよさは一目瞭然(りょうぜん)です。あえて、債券に投資する必要はないでしょう。まさに株式は資産形成の王道ということになります。

株式には、他の金融商品にはない特徴があります。債券にしても預金にしても、これらの金融商品は常に金利による裁定が働きます。つまり、金利との見合いによって、投資対象の価値が決まるということです。

これに対して株式の場合は、プロパーバリューの増殖といって、確かに金利裁定によって価値が決まる部分もありますが、それとともに、企業努力によって、金利裁定とは違ったところで価値が増えていく部分もあるのです。

これが、実際に資産運用を行う場合は、有利に働いてきます。将来的に、人々が必要とするであろう製品やサービスを提供している、それに向けて企業努力を繰り返している企業の株式を買っておけば、金利裁定とは関係のないところで、資産価値は着実に増えていくのです。

では、最近はやりの為替投資はどうでしょうか。ここ数年、FXという投資商品を用いて、自分の資産を増やしている方もいらっしゃいます。

もちろん、それを頭ごなしに否定するつもりはありませんが、このような外貨投資で成功する人は、ごく一部です。長期で放っておいたままで、資産価値が増えていくというたぐいのものではなく、したがって、誰にでも資産を増やせるようなものではありません。

長期投資家は、基本的になるべく為替リスクから離れようとするものです。基本は、自分が将来使おうと考えている通貨ベースで、いかに資産価値を最大化できるかがポイントになります。つまり、日本で生活し続けようと考えているのであれば、円ベースで資産価値を最大化する方法を考えるべきなのです。

もちろん、円安が加速すれば、いくら円ベースで資産価値を最大化しようとしても、外貨に対して円の価値が目減りするため、実質的に資産価値は減少してしまう。だから外貨投資は有効だという考えもあります。それは否定しません。

ただ、日本企業に投資すれば、実質的に外貨投資を行っているのと同じ投資効果が期待できます。内需企業は別ですが、それ以外の日本企業の多くは、海外進出を行っています。海外拠点のビジネス展開は基本的に現地通貨ベースで行われるため、日本企業に投資しておけば、みなさんの代わりに企業が外貨投資をしてくれているのと同じことになるのです。以前、ある船会社で聞いた話ですが、その会社の財務部は、全部で120もの通貨の値動きをウオッチしているとのことでした。これは、それだけ多くの通貨の値動きが、その会社の業績に大きな影響を及ぼしていることを意味しています。

外貨に投資する場合、自分で通貨の動きを管理するのは大変な作業です。何よりも為替は24時間動いていますから、深夜、寝ている時間帯に大きく為替レートが動いたら、もう何の対応をとることもできません。でも、日本企業の株式に投資していれば、その会社の財務部などが、みなさんの代わりに為替リスクの管理を行ってくれます。日本企業の株式に投資しておけば、さまざまな国や通貨に分散投資しているのと、同じ投資効果が期待できるのです。

長期投資は株式で、と申し上げた理由が、これでお分かりいただけたのではないでしょうか。

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