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経済コラム

為替レートは見方によって風景が変わる

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東京外国為替市場で円高が進み、モニターに1ドル=99円台の数字が表示された(3月13日午後、東京都港区の外為どっとコムで)

4月の中旬になって落ち着きを取り戻しつつある世界のさまざまなマーケット。中でも、日本の景気に悪影響を及ぼすと言われている円高が一服していることは幸いだろう。今後円高に動くのか、円安に動くのかは、為替の専門家に任せるとして、そもそも円高は私たちにとってプラスなのか、マイナスなのかを考えてみたい。その前に、ニュースや新聞などでは、円高、円高とひとくくりに述べられているが、現在の円高は米ドルに対して、あるいは1年くらい前の為替レートに対する比較であることを理解しておかなければならない。

約1年前、平成19年5月1日の為替レートを見てみよう。三菱東京UFJ銀行の1通貨あたりのTTS(対顧客電信売相場)では、米ドル=120.59円、ユーロ=164.66円、英ポンド=243.13円、豪ドル=101.26円、NZドル=90.60円であった。約1年後の平成20年4月18日の同行の為替レートは、米ドル=103.59円、ユーロ=164.57円、英ポンド=208.23円、豪ドル=98.21円、NZドル=83.19円である。確かに約1年前と比較すると、円高とひとくくりにしてほぼ間違いない。では、1米ドルが100円を割っていた1995年5月1日(当時の東京銀行)と比較してみると、米ドル=85.03円、ユーロ(前身のECU)=113.65円、英ポンド=139.40円、豪ドル=63.23円、NZドル=58.69円であった。現在の為替レートと比較してみれば、見事に全通貨が円高ではなく円安になっていることが分かる。円高とひとくくりにされてはいるが、比較する期間などによって、見解が180度変わってしまうということをまずは理解して欲しい。

さて、昨年後半から始まった巷(ちまた)で言われ続けている円高だが、大多数が円高は日本経済にとってマイナスであるという論調である。確かに、今回の景気回復は、外需産業の好調によるところが大きい。外需産業が世界景気の拡大を受け、輸出が伸び、かつ円安が続いていたために、一部の企業では最高益となったわけだ。外需産業が好調なうちに内需産業に好調が転嫁すれば円高に耐えられたのかもしれないが、転嫁する前に円高が到来してしまったため、円高が日本経済に悪影響を及ぼすと言っているのだ。外需産業は円高がマイナスとなることは確かだろうが、翻って私たちの生活にとって円高はマイナスとなるのだろうか。

結論から述べれば、円高は私たちの生活にとってはプラスとなる。円高になれば、電気やガスなどの公共料金が下がるうえ、輸入品の価格も値下がりするので、物価の上昇を抑えることになる。3月の下旬に大手のスーパーが、円高還元セールを行ったことは記憶に新しいところ。間違っても、円安(=輸入品の値上がり)還元セールはありえない。海外旅行だって、たとえばハワイに行くとして1000米ドル小遣いを持っていくとすれば、1年前は約12万円必要だったものが、現在は約10万3000円で済む。あるいは12万円用意できれば、約1165米ドルに替えることができるので、同じ円でたくさんの買い物ができる、言い換えれば購買力があがったことになる。為替レートに関する報道などは、企業側か家計か、あるいは1年前か13年前という期間の短・長で比較するかによって、お金に関する風景が180度異なるということを忘れてはならない。

深野 康彦 (ふかの・やすひこ)

ファイナンシャルリサーチ代表。クレジット会社勤務後、1989年4月にFP業界に入る。独立系FP会社2社を経て、2006年1月にファイナンシャルリサーチを設立、現在に至る。新聞、マネー誌や各種メールマガジンへの執筆・取材協力、テレビ・ラジオ番組などへの出演を通じて、投資の啓蒙や家計管理の重要性を説く。主な著書に「家計崩壊」「見えないインフレ時代を生きる知恵」「図解 金融機関にすすめられた商品の中身がわかる本」(ともに講談社)など。

(更新日:2008年04月28日)

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