税負担の増大や公的年金の減額が見込まれる将来。今までの蓄えと退職金だけで、自分たちの世代は逃げ切れるのか、と不安を抱えているよりも、将来を見据えて現状を把握し、退職後に備えることが大切だ。このシリーズでは、浮利を追うことを嫌う40〜50歳代に知ってほしい金融知識と正しい運用の心構えをファイナンシャルプランナーの話を交えて紹介する。
日銀のゼロ金利政策の解除観測が市場に広がった今年7月、大手銀行を中心に預入期間が1年未満の定期預金の金利が約6年ぶりに引き上げられた。7月14日にゼロ金利解除が発表されると、長く続いた0.001%という普通預金の超低金利を引き上げる動きがいよいよ現われ、横並びだった各銀行の金利にも差が生まれている。円預金は身近なお金の預け先だけに、金利の上昇傾向が続けば人々の関心をさらに集め、金融機関の商品競争が激化することが予想される。
ここで注意したいのは、あまりに長く続いた超低金利時代を平時と取り違えると、金利上昇に過敏に反応してしまいがち、ということだ。ファイナンシャルプランナーの和泉昭子さんは、「金利商品を見るときに大切なのは、いまと過去を比較するのではなく、未来の視点から今の金利を評価すること」だという。
「金利が将来どうなるか、誰も明言はできません。ただ40、50代の方なら、運用商品の知識はなくても、ご自分のビジネス経験や情報力を生かして世の中の動きと連動させ、有効なお金の生かし方を考える経済感覚があると思います。特に預け入れ期間が5年、10年という長期の定期預金を検討される場合、今後の景気変動を予想してみてください。金利を長く固定するということは、金利上昇のチャンスを手放すということ。個人的にはこの先のインフレや金利上昇の可能性を考えると、定期預金の預け入れ期間は3年程度までにしたほうがいいと思います」(和泉さん)
金利動向を考えるときに参考となるのは、過去の実質金利の推移を長い目で見渡してみることだ。実質金利とは、名目金利(市中で表示される預金金利)から物価上昇率(物価変動の影響)を差し引いた金利のこと。例えば名目金利が1%、物価上昇率が2%であれば、実質金利はマイナス1%になる。

定期預金をチェックする時は、「金利」だけでなく「期間」と「解約条件」も重要なポイントだ。定期預金は満期まで待てる余裕資金を預け、中途解約はしない預けっぱなしが基本だけに、ともすると細かな条件の確認がおろそかになるので注意したい。
特に正しい理解が必要なのは、「5年ないし10年」など幅のある2つの満期日が記載されている定期預金だ。これは5年ものと10年ものの2つの商品があるのではない。当初5年満期の予定で預け入れたとしても、金融機関の判断によって最大10年まで期間延長があるという意味だ。こういった定期預金には、「期限延長特約付き」といったただし書きがついている。
また、定期預金には、中途解約ができる商品(その場合、普通預金の金利が適用されるのが一般的)と、中途解約が原則としてできない商品がある。「期限延長特約付き」の定期預金は、中途解約ができない商品だ。また銀行がやむを得ないと認める特別な事情で中途解約できた場合にも、元本を割る可能性がある。
「広告をよく見ると、『年○%』と大きく目立つ文字で利率をアピールしている一方、こういった重要な事柄に関しては小さな字で書いてある例が少なくありません。金融商品の情報は小さな文字に注意することがポイント。現在の金利水準から見れば比較的好金利と見られる商品には、必ず仕組みがあるはずです。その仕組みを知った上で利用するようにしてください」(和泉さん)
金利が魅力的な方向へ動きはじめた今だからこそ、流動性リスクのある金融商品は、将来の期待利益の機会損失という観点からも検討するようにしたい。
(更新日:2006年09月06日)

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