税負担の増大や公的年金の減額が見込まれる将来。今までの蓄えと退職金だけで、自分たちの世代は逃げ切れるのか、と不安を抱えているよりも、将来を見据えて現状を把握し、退職後に備えることが大切だ。このシリーズでは、浮利を追うことを嫌う40〜50歳代に知ってほしい金融知識と正しい運用の心構えをファイナンシャルプランナーの話を交えて紹介する。
9月13日、秋の個人向け国債の募集が開始された。個人向け国債は、日本国が発行し、満期日の元本と半年ごとの利子の支払いを保証する債券であり、個人であれば誰もが1万円から買える商品だ。
個人向け国債には、2003年から発行されている「10年・変動金利」と、2006年1月から新たにスタートした「5年・固定金利」がある。毎年度4回、3カ月ごとに発行されているが、今回の「10年・変動金利」の初期利率は年率0.92%(税引き後0.736%)。「5年・固定金利」の利率は、年率1.13%(税引き後0.904%)。10年ものよりも5年ものの方が利率は高い。定期預金などでは満期が長い方が利率は高いのが原則だが、なぜか。理由は、2つの金利タイプの違いにある。
固定金利型の5年ものは、最初に適用される利率が満期までずっと続く。一方、変動金利型の10年ものは、その時の実勢金利に応じて、利率が半年ごとに見直される。ただし、経済状況の変化によって基準金利がいくら下がっても、最低利率の0.05%は保証されている。つまり「10年・変動金利」は、金利が今後上がるかもしれないし、最低保証はあるが下がるかもしれないということ。「5年・固定金利」との比較では、現時点での利率差より、今後の金利動向がポイントになってくる。
ファイナンシャルプランナーの和泉昭子さんは、「10年ものの利率の変動の推移と、5年ものの利率を比較してみれば、個人向け国債の金利タイプを選ぶ参考になる」と語る。
「5年ものの個人向け国債の発行は今年になってからのことですが、それから半年を経て、同時期に発行された10年もの(第13回債)の利率が見直され、5年ものの利率を超えました。初回の利率だけに注目すると5年もののほうが有利に見えますが、商品を選ぶ際には、金利の上昇局面にある今の経済状況を念頭に入れておいたほうがいいと思います」(和泉さん)

10年もの個人向け国債は発行から1年経過すると、5年もの個人向け国債は2年経過すると中途換金ができる商品である。ただ、条件として、10年ものは中途解約の直前2回分の利子相当額、5年ものは中途解約の直前4回分の利子相当額を支払うと定められている(いずれも税引前)。したがって保有期間が短ければ、受け取り金額が投資した元本を下回ることもある。財務省のホームページには、中途換金した場合の利子の累計額と、払い戻す利子相当額がシミュレーションできるサイト(http://www.kankin.mof.go.jp/)がある。満期まで預けるつもりの方も、元本を回収できるのがいつなのか、目安の期間を把握しておくとよいだろう。
総合的に見れば、個人向け国債は投資初心者や老後資金を安定的に運用したい中高年層が買いやすい商品だといえる。現在の日本という国の信用性を考えれば、5年先、10年先の約束を破られる心配は少ないと考えるのが常識的だろう。しかし一方で、「国債というのは、日本の借金。ツケは自分たちの子どもたちが払うのだということも忘れないでほしい」と和泉さんはいう。
「国債の発行残高や借入金などを含む国の債務残高、つまり日本の借金は827兆4805億円(今年3月末)。国民1人当たりの借金は648万円にもなる計算です。大切なお金を堅実に増やしたいという一般の方々のささやかで切実な気持ちには共感します。ただ、私たちの国の未来を次の世代に託すどらく世代の方々には、社会や企業の成長性に期待するような投資にも目を向けていただきたいというのが、私の正直な思いです」(和泉さん)
個人向け国債は、銀行、証券会社、郵便局などで取り扱っているが、一部の金融機関では口座保管料というお金が必要になる。口座維持の手数料は各社によって違う。商品自体はどこで買っても同じなので、できればコストのかからない金融機関を選びたい。
(更新日:2006年09月20日)

※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。