手紙や電話によるコミュニケーションには、費用がかかるが、お金のかからないつながりもある。それは、自分の家族や住んでいる地域とのコミュニケーション。向こう三軒両隣の時代とは社会環境を含めてあらゆる状況が異なるが、隣人や地域とのコミュニケーションは「どらく世代」が少年少女だったころとは比較にならないほど少なくなった。その揺り戻しなのか、「どらく世代」のボランティアや市民活動への関心は高い。そこで、コミュニケーション後編では、とくに教育に関するボランティア活動にスポットあててお届けする。

東京都小平市立第六小学校では、毎週月曜日の10時ごろになると、地域に住む中高年が続々と「登校」してくる。10時20分から50分までの中休みの時間が、ボランティアと小学生が交流する「ふれあいマンデー」となっているためだ。
同校の長津芳校長によれば、「本校では9年前から『地域で育てようすこやかな子ども』『地域の風がいきかう学校』を合い言葉に「ふれあいマンデー」を実施しています。多いときで15名くらいのボランティアの方が、昔の遊びなどを通じて子どもたちと交流してくれます」という。
取材に訪れたこの日は、6名のボランティアが参加し、校内の和室に集まった40名ほどの子どもたちを相手に、和気あいあいと、将棋やオセロ、編み物、折り紙、こま回しなどを手ほどき。季節柄、「お母さんへのクリスマスプレゼントに、手編みのマフラーをプレゼントしたい」という子どもがいたり、お正月を控えて「コマ回しがうまくなりたい!」という子もおり、活気にあふれている。
ボランティアの一人、有田高人さんは活動について、「ここで将棋の手ほどきをした子が、その後グングン強くなり、奨励会(プロ棋士の育成機関)に入会しました。子どもの伸びる力とは本当にすごいもので、つぶさに見られるのは楽しいものです」と、笑顔で話す。有田さんは、元中学校の校長。「ふれあいマンデー」にボランティアとして参加するほかに、学校運営への助言も行う。長津校長も「大先輩からのアドバイスは心強い」と信頼を寄せる。
この日参加したほかのボランティアの方々も、「学校外でも子どもたちがあいさつをしてくれたり、声をかけてくれたりするのがうれしい」「自分の子どもを地域で育ててもらったので、今、恩返しをしている気持ち」「ボランティアができるのは、自分が健康なのはもちろん、家庭円満で金銭的にも不安がなく、幸せな証拠」などと、口々に参加の理由や喜びを語ってくれた。
小平第六小学校では、この「ふれあいマンデー」のほかにも、地域と連携した活動を行っている。図書室の蔵書整理や本の読み聞かせをする「図書ボランティア」、校内の花壇や植え込みを整備する「花と緑のボランティア」、登下校のパトロールなどを行う「ふれあい安全ボランティア」などがある。



さらに、授業でもボランティアの力がいかされている。「学習支援ボランティア」として、算数の授業に年間100時間以上、通算4年間にわたって参加している桑原勇さんは、元郵便局員。「退職後の人生をどのように過ごそうかと思案していたところ、「学習支援ボランティア」の存在を知り、小平市のボランティア育成講座を受講しました。子どもが好きで、少年野球の指導をずっと続けているのですが、何かお手伝いできることがあるのではないか、と思ったのです」と、ボランティアのきっかけを語る。桑原さんは、「楽しいから続けられる」と話す一方で、「今の子は、興味や関心の対象が多様化しているせいか、あまり集中力がありません。そのような子に声をかけたり、自信がなさそうにしている子を励ましたりします。時には『いけないかなぁ』と思いつつ怒ってしまうこともあるのですが、先生を応援してあげる存在が、今の教室には必要だと感じています」と、実感を込めて指摘する。
小平第六小学校では、取り組みに加わるボランティアの層も多様だ。地域に住む中高年だけでなく、学生、近隣の大学とも連携が図られている。長津校長は、その理由を次のように語る。
「学校が週休2日制になり、子どもが登校するのは年間でおよそ2百日。したがって、160日あまりは地域で過ごすことになります。そのため、地域との協力・連携がなければ子どもを育てていくのは難しく、また、地域がしっかりしていなければ子どもの受け皿にはなりません。学校が地域の核となり、地域を活性化していきたいのです。
ボランティアの方々のご協力がなければ、本校の取り組みをここまで大きな力にすることはできませんでした。地域にかわいがってもらった子どもは、地域にその恩返しをしてくれます。このようなサイクルが定着し、広がっていくことで、地域が活性化し、地域ぐるみで子育てをする環境が根付いていくのではないでしょうか」
同校は、「文部科学省コミュニティ・スクール推進事業委嘱校」として進めてきた研究の成果と今後の可能性を、2007年2月2日に発表する。来春、小平市より「コミュニティ・スクール」として指定される予定で、地域との連携をより緊密にし、地域全体で学び・交流の場としての機能を果たしていくことを目指す。
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