

浮世絵の技術は、現代にも受け継がれている。アダチ版画研究所では、木版職人の彫師と摺師が、当時と変わらぬ技術で浮世絵を復刻しているという。
アダチ版画研究所の創業者は、先代の安達豊久氏だ。画報社で編集の職についた同氏は、口絵や表紙の編集を通じて多くの復刻浮世絵を目にすることがあったが、その複製は粗悪なものだった。「江戸の庶民が楽しんでいた浮世絵の本当の良さを、もっときちんとした形で多くの人に知ってもらいたいという思いから、アダチ版画研究所を始めました」と豊久氏について語ってくれたのは、同研究所の中山周さんだ。
「やはり浮世絵が本当に好きだったのだと思いますよ」
浮世絵は、まず絵師が線画を描き、次に彫師が版木を彫る。絵師が色を指定して、彫師が色の数だけ色版を彫る。最後に摺師が1色ずつ、1枚の和紙に重ねて摺る。これだけの工程を経て、ようやく完成する。
初めてその浮世絵を摺る、初摺の際は、摺師のもとに絵師と版元が立ち会って、色合いなどを細かく指示をして作られた。初摺には、絵師と版元の意図が忠実に再現されているのだ。だからこそ、アダチ版画研究所のこだわりは、「初摺に忠実に」なのだという。
「難しいのは、保存状態の良い初摺を探すことです。いくつかの作品を比べて、復刻するものを決定します」
彩色には天然の顔料を使う。
「当時とほぼ同じ顔料を使い、より初摺に近い色が出るように、試行錯誤しています」
アダチ版画研究所の職人は、彫師が2人、摺師が4人、そして見習いが2人。
「木版技術の職人は、全体的に減ってきています。人がいなくなるということは、技術が絶えることです。世界に誇れる伝統技術を残そうと、アダチ伝統木版画技術保存財団を設立しました」と中山さん。財団では年間1、2人を受け入れ、職人となるための研修をしている。基本的に1年の研修期間を経て、職人の道に進むかどうかを各自が判断する。「彫師や摺師の仕事は、5年10年で十分ということはありません。一生努力を積み重ねなくてはならない、大変な仕事です」と中山さんは語る。アダチ版画研究所の4人の摺師のうち2人は、30歳と25歳の女性。摺師としての誇りを持ち、親方の教えを受けながら、日々研究を重ねている。
浮世絵の技術は、確実に未来へとつながっているのである。





アダチ版画研究所
ショールームは定期的に展示替えを行う。2007年3月23日まで、「木版画に見る 桜いろいろ〜北斎・広重から現代作家まで〜」を開催。日祝・第1・3・5土曜日休館。10時〜18時(土曜のみ17時)営業。


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