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賢いお金生活

vol.1森永卓郎さんに聞く 今後10年、経済を読む

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収入の不足分は楽しみながら稼げばいい

和泉これまでとは違う世界が見えてきましたが、社会が変わっても守るべき暮らしというものもあるわけですよね。私のセミナーにも、ものすごく不安そうな50、60代の方たちが多くいらして、これから生活はどうなるんだろうと。特に医療や介護も年金といった負担増の重圧はかなり感じているようです。そのあたりはどうですか。

森永私はずっと年金だけで暮らせると思っていたんですが、どうも小泉内閣になって、そうでもないようです。要するに生活の一番基礎的な部分をがんがん切り込んでいってしまったわけですね。今までの標準モデルだと年収で280万円ぐらいの年金があり、そのぐらいあれば生活ができたわけです。それがただでさえマクロ経済スライドで支給額を引き下げられているのに、昨年12 月の国勢調査に基づいて出生率が見直しされましたね。

和泉はい、前回推計で1.39だった出生数の長期見通しが、1.26に下方修正されました。

森永1割以上下がったわけですから、どう考えても支給額も下がるわけで、280万円ぐらいもらえた年金が、200万円ちょっとになると考えられます。

和泉これはかなり大変です。収入の上積みをどう考えていくか。

森永上積みということでは、賦役(ふえき)としての労働ではなく、楽しいことをやって年間70〜80万円を稼ぐのは十分可能だと思うんです。例えば私の知人の釣りマニアに、自分が釣ってきた魚を料理し、自宅で居酒屋を開いている人がいます。近所の仲間に来てもらえれば、月5万円程度の稼ぎならそう難しくないんですよ。

和泉自分で楽しみながら収入オンできれば、確かにいいなと思いますね。ただ、近い将来消費税の引き上げも控えていて、これは特に年金生活者にとって大打撃になるはずです。自分で上積みがある程度できたとしても、収入が目減りしていくということにどういった心構えでいればいいでしょう。

森永大切なのは、「幸せって何だろう」という考え方の転換です。ヨーロッパ大陸の人たちのレジャーって、なんにもお金使わない。家族でピクニックとかに行くんですよ。街角ではカフェのオープンテラスでおじいさんが、カフェオレ一杯でぼうっとしています。最近、それが幸せなんだということに、日本人も気づきはじめたんじゃないでしょうか。テーマパーク的な、高級レストランのフルコースのようなセッティングされた幸せもいいとは思います。でも、お金がなくても気のおけない仲間が集まって、家庭料理を持ち寄り、思わずにこっとほほ笑んでしまうような会話のある時間が本当のぜいたくだと思うんです。

和泉本当にそう思います。幸せの基準を変えるということですね。

森永私は気の合う仲間たちと「貧乏暇あり」宣言をしているんです。そうするとお金があっても忙しい人たちが直前に行けなくなったコンサートや美術展のチケットをけっこう譲ってもらえるんですよ。それを自分の目で見て、自分の感性で理解して誰かに伝えた言葉って、雑誌やネットで得た情報よりも圧倒的に強いんです。そんなふうにお互いに人を楽しませたり、考えさせたりして心を交わすことが一番の幸せではないですか。

夢はすぐ実行、ダメならすぐ次へ

和泉もうひとつ伺いたいのは、世界の経済の動きとどう距離をとるかということです。アメリカや中国は、今日の森永さんのお話とは違う方向で進んでいると思いますし、国内の経済もそれに影響を受けざるをえないのが現状ですよね。

森永世界の中で市場原理主義に走っているのは、先進国ではアメリカとイギリスと日本。途上国では中国とインドがちょっと。大部分の国はまったく違うライフスタイルをとっています。ただ、市場原理主義の「ハゲタカ」の世界は必要悪の部分もあるし、ある意味魔力をもっているんですね。昔、イギリスは「ゆりかごから墓場まで」といわれていたのに、サッチャーが金融ビッグバンをやり、右から左にお金を動かすだけで巨万の富を動かす若者が出て、それを見てイギリスは国全体がおかしくなってしまいました。その背後で、真面目な物作りというのがどんどん失われてしまったわけです。

和泉せっかく日本が元気になってきているのに、世界のそうしたバブル的な動きに振り回されてしまうことがあると思います。日本はどうすればいいでしょうか。

森永確かに金融や情報、エンターテインメントなどは年功序列、終身雇用ではうまくいかないですし、別の手法が合っている面もあります。ところが農業や製造業、基本的なサービス業という大部分の世界は、一瞬の思いつきでいいものができることはありえないし、そこに市場原理を巻き込んではいけないとおもいます。国として両方をもつことは難しいのですが、日本もいずれは両方持たなくてはいけない。極端にいいますと、山手線の内側は弱肉強食のハゲタカの世界、その周りに森を作って、外側は他人の幸せと共に自分の幸せを見いだせるような、のんびりとした世界に二分できたらいいんですけれどね。

和泉森永さん、今からでも遅くないので、政治家になってください(笑)。

森永だめだめ、選挙に出たら離婚するって、妻に約束されていますから(笑)。いずれにしても、団塊世代の方は、定年後に夢があると思いますが、いつかやろうと考えているばかりで行動に移さないのはよくないですよね。やってみて、これは実現しそうもないと分かったらさっと割り切って、次の夢に移るということも人生では大事だと思います。「こんなこと自分にしか興味がないだろう」ということでも、ネット時代のいまは仲間が見つかるはずですし、そこに新しい可能性もあります。

森永 卓郎 (もりなが・たくろう)

1957年生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。80年に東大経済学部を卒業、日本専売公社などを経て、三和総合研究所に入り主席研究員に。その後、三菱UFJリサーチ&コンサルティング客員研究員などを歴任。

和泉 昭子 (いずみ・あきこ)

生活経済ジャーナリスト/ファイナンシャル・プランナー。横浜国立大学卒業後、出版社・放送局を経て、フリーのキャスターに。95年CFP取得後、現職へ。メディアや講演活動などを通じマネー&キャリアの情報を発信。

(更新日:2007年04月13日)

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