ファンドに組み入れる債券や株式を運用のプロが選び、その運用成果に応じて収益が得られる投資信託は、リスク商品のビギナーには身近な資産運用の選択肢です。しかし国内で一般向けに販売されている投資信託は約2,800本といわれ、本当に自分に合ったものを探し出すのは至難の業。堅実な運用を目指す“ごく普通”の人々のための投資信託の選び方のポイントを、ベストセラー「投資信託にだまされるな! 本当に正しい投信の使い方」の著者であるファイナンシャル ジャーナリストの竹川美奈子さんにうかがいました。
―― 一言で投資信託といっても数多くのタイプがあり、情報も氾濫しています。これから初めて投資信託を買ってみようという人が、情報に惑わされないために注意すべきことは何でしょう。
竹川美奈子まず注意が必要なのは「新規設定」と「流行(はやり)モノ」。つまり金融機関が大々的に宣伝や広告をしている新しく設定されたファンドや、一昔前ならIT関連、最近でいうと地球環境関連といった話題性で注目が集まっているファンドです。
投資信託を選ぶには、「運用報告書」などでコストや過去の運用実績を確認して、どれだけのリスクとリターンがあったかなどを知った上で判断することが大事です。新規設定のファンドではそういう手がかりとなるデータがないわけですから、売り手側の説明を聞くしかありません。
クルマなら買う前に試乗をするわけですし、家電製品だったら最近はネットなどで使っている人の評判を調べてから決めますよね。それが金融商品になると、店頭にポスターが貼ってあったり、きれいなパンフレットが目についた新規設定のものにぽんと飛び乗ってしまう方が多いのです。
――とはいえ流行モノのファンドは、成長が期待できる理由があるとプロが判断したから、次々とファンドが組まれているのだと思うのですが。
竹川流行モノのファンドは、組み込まれている各銘柄の人気が、すでに高い時点から設定されている場合が多いのです。そこから大きく下がったり、一時的に値上がりがあってもバブルが崩壊した後は低迷ということが過去にはありました。こういった売買のタイミングが難しいものは、安心して長く持つには向きません。
それとファンドの仕組みが複雑な商品や、いろいろと一定の条件が付いている商品も注意が必要です。条件というのは、例えば広告で「(分配金などで)決められた利回りが得られます」とうたっていても、但し書きをよく読むと「運用期間中、日経平均株価が何%まで下がらないことが条件」とあるような商品です。そのほか「オプション」とか「デリバティブ」とか、自分がよく分からない仕組みを使っているものも、いきなり初心者が買うことはないと思います。
――つまり私たちが検討すべき投資信託はその反対。過去の運用に実績があり、仕組みがシンプルで分かりやすいものということですか。
竹川その通りなのですが、どうも多くの方たちは、いざ資産運用というと極端に走ってしまう傾向があります。これまでは預貯金だけという方が、金融機関に勧められるまま、いきなり運用資金の八割ぐらいで外債ファンドとか毎月分配型のファンド、もしくは中国やインドといった新興国のファンドを買いました、という話をよく聞きます。
資産形成として投資信託を買うのであれば、「面白そう」とか「楽しそう」というのは選ぶ理由として違います。面白くなくていいからシンプル。オーソドックスなものをコツコツ買うということが一番大切だと思います。
――今年の9月30日に金融商品取引法が施行されて、元本割れのリスクがある金融商品を販売する場合など、利用者に対してより分かりやすい説明が義務づけられたと聞いています。個人投資家が惑わされることは、少なくなるのでしょうか。
竹川 現場の対応が始まったばかりなので、本当に個人投資家保護に繋がるものになっていくかは見守らなくてはいけないと思いますが、いずれにしてもリスクというのは、本来、その人の資産状況全体を見た上で把握するものです。今どんな資産があり、それだけではこういったリスクがあるから、ほかにこんな商品を組み合わせることでリスクを抑えられるとか、そういう全体像を知ることが必要なのですね。個別のファンドのリスクが分かりやすくなっただけでは、本当の意味でのリスクヘッジにはならないと思います。
※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。