そろそろ定年を迎え、お子さんも巣立っていく世代の心配は、家族のために残すお金のことよりも、自分たちの長生きにどう備えるかに重点が移っていきます。病気のリスクが増えていく高齢者にとっても、医療費の自己負担増が大きな負担となっていく将来。自分たちの医療や介護について、今からどのように備えればいいのでしょう。ファイナンシャルプランナーの豊田真弓さんにうかがいました。
――2006年10月から、現役並みの所得(夫婦2人世帯で年収520万円以上)がある70歳以上の高齢者の医療費自己負担が2割から3割に上がりました。自己負担限度額も上がり、これからはリタイア世代にとっても、医療制度の受益者負担が重くのしかかる時代が訪れようしていますが。
豊田真弓実は高齢者の医療費負担増は、来年4月からさらに本格的に行われるはずだったのです。具体的には「74歳から77歳の病院での窓口負担を、現行の1割から2割に引き上げる」、「70〜74歳の医療費が高額になった時に支払う自己負担額である高額療養費の上限を引き上げる」などの制度改正が予定されていました。
ところが先日、これらを凍結することが決まったんです。これは夏の自民党総裁選で、福田さんが参院選の大敗を受けて「高齢者の医療費負担増の凍結を検討する」と公約した流れを受けたものでした。
ただ凍結されたとはいえ、この問題の根本には少子高齢化があります。医療保障制度を持続するには、自己負担増はいずれ避けられません。例えば下の表で「70歳以上で一般の所得者」に該当する方の中で、70歳から74歳の方は、あやうく来春、44,400円の高額療養費が62,100円にアップし、2万円近く自己負担が増えるところだったのです。医療をお金で買う時が、そこまでやってきています。
| 所得区分 | 70歳未満 | 70歳以上(入院の場合) |
| 高所得者 | 15万円+(医療費−50万円)×1% | 8万100円+(医療費−26.7万円)×1% |
| 一般の所得者 | 8万100円+(医療費−26.7万円)×1% | 4万4400円 |
| 低所得者 | 3万5400円 | 1万5000円または2万4600円(収入による) |
――年齢を重ねれば病気のリスクそのものも高まるわけですが、医療費の自己負担増時代に、私たちはどう備えればいいでしょう。
豊田まずポイントは、貯蓄と保険の両輪で考えるということです。できれば定年後の医療用と介護用で、ご夫婦で1千万円ぐらいの枠を貯金でとれるなら、とても楽ですよね。また、これから保険を見直すという場合は、年齢的にいっても保険料が高くなります。その保険でどんなリスクに備えられるか、これを反対に言えば、どんな場合には保険金が支払われないかをしっかりと確認し、保険料とのバランスを考えて選ぶことが大切です。
それと医療保障の必要額を考える時は、上の高額療養費のことを考慮してください。高額療養費は、70歳未満の方は、以前は自分で医療費を支払った後に申請し、後で払い戻される制度でしたが、今年4月からは加入している医療保険の保険者に事前申請をして、発行される認定証を病院に提示すれば、立て替えの手続きなしに限度額内分の支払いですむようになりました。
――団塊世代の方たちには、既になんらかの保険に加入している方が多いと思います。その見直しのポイントはどのような点ですか。
豊田お子さんが大人になられているのなら、これから保障の柱になるのは死亡保障よりもご自身の医療保障なのですから、そのウエイトを切り替えるということがまず一点です。今入っている生命保険に医療特約がついている方も多いと思いますが、そのほとんどが一定の年齢で保障が終わる「定期型」です。また、単体の医療保険に入っている方も、定期型だという方は少なくないでしょう。どらく世代の方で定期型の方は、健康状態などが許せば、早めに終身型に切り替えると、老後の医療に関して、安心をえることができます。
ただし、終身型は定期型と比べると保険料が高いですから、新たに加入する場合には、特約をいろいろ付けると、保険料が家計の負担になるおそれがあります。そういう方は「入院したら1日いくら」、「手術代としていくら」といった入院・手術中心のシンプルな医療保険にして、いろいろと細かなリスクについては貯蓄で備えるといった形にするのがいいのではないかと私は思います。
――持病があるので、もう保険には入れないと諦めている方もいらっしゃいます。
豊田
入りやすい保険ということであれば、最近は告知項目が3つや5つなどと限定された「限定告知型」という医療保険が登場しています。これは過去の一定期間に入院をしていないとか、ガンなどの定められた病気で通院していないといった、商品ごとの告知項目にひっかからなければ加入できるものです。
こういった保険の多くは、契約前の病気が悪化して入院や手術した場合も保障が適用されます。また、年齢条件だけクリアすれば誰でも加入できる「無選択型」の医療保険もありますが、このタイプは加入時の前からあった持病の保障には制約がありますし、保険料も高くなります。
それから「ガンはお金がかかる病気」ともいわれますが、持病があってほかの一般の医療保険への加入が厳しいというのなら、ガン保険だけでも加入して、その他の病気は貯蓄で備えるという考え方もありますね。
ガンは再入院のケースが多い病気ですし、公的な医療保険の使えない民間療法や先進医療を受ければお金もかかります。ガン保険であれば、原則として過去にガンを発病したことがなければ、その他の加入条件は比較的ゆるめなので、通常の医療保険に入れないという方には、ひとつの選択肢です。
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