「大した財産は我が家にないから」「親も元気で、切り出しづらい話」と、相続の準備は先送りになりがちです。ところが親に万が一のことがあった時、家族が何も話し合っていないと、何かと意見がすれ違うもの。親が元気なうちに本人の意思を確認したり、問題を洗い出しておけば、全員が納得できる相続の準備ができるはずです。ファイルナンシャル・プランナーの久谷真理子さんに、円満な相続のためのアドバイスを聞きました。
――久谷さんは、相続の実務的なコンサルティングを数多く手がけているそうですが、家族にどういった財産や事情がある場合、相続の準備を考えたほうがいいでしょうか。
久谷真理子結論からいえば、相続はすべてのご家族に考えていただきたいことです。相続対策には大きく三つの面があります。ひとつめは「相続税額をいかに少なくするか」という節税対策。二つめは「納税資金をいかに用意するか」という納税資金対策。そして三つめは「財産をいかに分けるか」という分割対策です。
相続税には、「5000万円+1000万円×法定相続人の数」という基礎控除額があります。仮に相続をするかたが妻と子2人の合計3人なら、8000万円以下の財産には税金がかからないわけで、現実に納税が必要になる相続は100人に4人ほどのケースです。しかし財産の分割は、どんな家庭でも持ち上がる問題です。実は、これで家族がもめることが多いのですね。「もめる」というのは、主張が真っ向からぶつかって大喧嘩になるということばかりではありません。お互い言いたいことが言えないまま不満がずっとくすぶり、仲のよかった兄弟が疎遠になってしまうということもあります。
――「もめる」原因とは、具体的にはどんなことですか。
久谷分けにくいものの代表といえば、不動産ですね。財産の内訳を見ると、親が一生をかけて築いたご自宅の家と土地がどんとあって、後は預貯金が少しというのはよくあることです。
こういった場合、家を売ったお金を分ければ解決するとは限りません。「思い出の詰まっている実家を売りたくない」というかたと、「維持するのが大変だから売ろう」というかたに意見が割れることがあるのです。また、現在どなたかが住んでいるなら、その他の相続人にどういった形で財産を分けるかが問題です。
親の所有物とばかり思っていた自宅が、ふたを開けてみると祖父の代からきちんと相続の手続きがされておらず、親とその兄弟の共有財産になっていたということもあります。さらにそのご兄弟の中に亡くなったかたがいて、そのお子さんたちに相続の権利が発生しているとなると、それを全部洗い出し、話をまとめるのは大変な時間と労力がかかります。分けにくいものこそ、事が起こる前に分け方を考えておくことが大切です。
――相続というのは資産家の心配事と思っていましたが、どうやらそうではないということですね。では、いつごろから、どういう形で準備を始めればいいのでしょう。
久谷いま50代前後のかたが、相続財産を受け取る立場、つまり「子ども世代」であれば、準備を始めるのに早過ぎることはないですね。親が元気なうちに相談を始めていただきたいと思います。親にしっかりとした判断力があるうちにということもありますが、早めに考えておけば、相続財産を円滑に分けるために生命保険に入るとか、節税のために時間をかけて生前贈与をするといった対策がとりやすいからです。
――とはいえ、相続は自分の親に万一のことがあった時の相談事です。面と向かってはなかなか切り出せず、とりあえず兄弟で話を進めるということもありそうですね。
久谷それはお勧めできません。当事者の親御さんを置き去りにして、子どもたちだけで話を進めると、後で話がよくこじれるのです。勝手な相談をしていると受け止められて、「財産は、いつも世話になっている近所の人に全部譲る」とか「愛犬に渡す」といった遺言を書かれてしまうことが実際にあります。
相続は、タテ(親子間)とヨコ(兄弟間)のどちらの意思疎通も大切です。私が相談を受けるケースでも、親子両方の家族がそろってお見えになった場合はもめ事が少ないと思います。
※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。