――冒頭で、相続で税金を払うケースは少ないことは分かりましたが、どういう仕組みで相続人とその割合が決められるのですか。
久谷真理子相続は、亡くなった個人(被相続人)の財産を、一定の相続人が受け継ぐのが基本的な形です。この相続人の範囲や順位は民法で決められています。また、分割の割合についても定められていて、これを「法定相続分」といいます。
配偶者がいる場合は常に相続人になります。子どもがいるなら、「第1順位」として、子どもも同時に相続の権利を持ちます。子どもがいなければ被相続人のご両親(第2順位)。両親が亡くなっていれば、被相続人の兄弟(第3順位)と相続の権利が移ります。
配偶者と子が法定相続人の例 |
―-―民法上からも、亡くなった夫(妻)の財産を、妻(夫)と子どもたちで相続するというケースが一般的ということですね。
久谷その場合、法定相続分では夫(妻)が財産の半分、子どもたちが残りの半分を均等に分けるということになります。ただし、事前に決められた書式に従って遺言を作っておけば、だれにどういう割合で相続させるかについて、被相続人の意思を反映させることができます。
| 自筆証書遺言 |
・自分で遺言の全文・日付・氏名を書き押印(ワープロは不可) ・遺言の内容や作成の事実を秘密にしやすい ・紛失や改ざんのおそれがあり、無効になる可能性もある |
| 公正証書遺言 |
・2人以上の証人が立ち会い、本人が口述して公証人が筆記する ・公証人が読み聞かせて、各自が署名押印(費用や所定の手続きが必要) ・遺言が効力をもつ可能性が高いが、内容を秘密にできない |
――生きているうちに財産を子どもに譲りたいという親もいますが、譲られた側は贈与税を払いますよね。節税のポイントはありますか。
久谷生前に贈与を行うと、親の希望に沿った資産分配を見届けられるというメリットがあります。贈与には、1人あたり年間110万円の基礎控除がある「暦年贈与」と、20歳以上の子が65歳以上の親から贈与を受けた時に、年間2500万円まではとりあえず贈与税がかからない「相続時精算課税」があります。
「暦年贈与」は、昔から節税対策として使われていますが、大事な注意点があります。お金を子ども名義の預金通帳に移すだけで、贈与の意思が子に伝わってなく、印鑑や通帳もずっと親が管理していた場合などは、贈与そのものが否定されることがあるのです。親子の間で贈与契約書を作るなど、きちんと贈与があった事実を作ることが必要です。
「相続時精算課税」は、2500万円まで贈与税が免除になるわけではなく、相続がおこった時に、贈与財産を相続財産に加えて相続税を計算し、すでに支払った贈与税額を控除するというものです。ただし、贈与財産は贈与時の評価額で計算されるので、長期的に見て価値の上がりそうな財産を先に贈与しておくと、節税になる可能性があります。
なお、「相続時精算課税」の利用は、贈与者である親ごとに利用を選択するようになっていますが、いったん選択をした親からの贈与に関して、以後暦年贈与を利用することができません。
――最後に、これから相続について親子・兄弟で話し合ってみようというご家族に、アドバイスをお願いします。
久谷
個人の権利意識が強くなった現在、「親の財産は子どもたちが平等にもらうもの」といった考え方が一般化しています。遺言がない場合、相続財産は、相続人同士が話し合って分けることになりますが、相続人それぞれが抱える事情もあり、実際には話し合いがすんなりといかないケースも見受けられます。たとえば、家でご商売をされている場合、親は「事業を引き継ぐ子どもに、それに必要な建物や事業資金を渡したい」と思っていても、他の子どもたちの考え方は違うということもあり得ます。
相続は、当事者全員を巻き込むことがまず大事。親子で「誰が何を受け継ぐか」をしっかり共有し、そのうえできちんとした遺言を作っておくことが後々のトラブル回避につながります。年の暮れからお正月にかけては、家族が賑やかに集まる時期ですよね。あまり深刻にならず、親に相続の話題を持ち出してみるよいタイミングではないでしょうか。
久谷真理子
くたに・まりこ。ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引主任者、住宅ローンアドバイザー。慶大法学部法律学科卒業後、都市銀行で融資業務に従事。退職後、司法書士事務所で不動産登記を担当。FP取得後は、主に住宅や投資用不動産、相続に関するプランニングから実行まで、総合的なサポートを行う。(株)プラチナ・コンシェルジュ所属。

(更新日:2007年12月17日)
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