――夫婦の将来のライフプランがある程度見えてきたとして、では家計をどのように見直していくのでしょう。
藤川太自分の将来に関心をもつようになれば、老後の年金や退職金がいくらもらえるのかが知りたくなります。それでは少ないということが分ったら、「では何歳まで働けるのか」というのがもっとも大きな見直しのポイントになります。
これから退職する世代は、これまでの世代に比べて働き方の選択肢が多いんですよ。昔であれば、本人が元気であろうとなかろうと60歳で定年退職。しかし現在は、退職金の割り増し分をもらって60歳前に早期退職の道を選ぶこともできます。一方、65歳までの継続雇用制度を導入している企業も増えつつあります。経済的な条件が整っていれば、自分の希望で定年が決められるんです。家計の見直しというと、月々の食費やお小遣いの切り詰めのような「やりくり」の話だと思いがちですが、働く年数が1年増えれば収入は何百万円と変わってきます。
――実際いまの50代の方たちは、自分の「定年」に対してそれほど柔軟に考えているのでしょうか。
藤川ほとんどの方は、考えていないですね。60 歳からもらえる定額部分の年金支給が段階的に繰り下げられて、年金生活は実質65歳から、それでも足りないかもという状況は頭では理解しています。でも、今のサラリーマンはリストラ不安が誰にでもあって、60歳まで会社に生き残ることも大変です。その上あと5年働くなんて、考える余裕がないのでしょう。いざ60歳以降も働かなくてはならないとなると、今度はプライドの問題が出てきます。これまでと同じ仕事なのに給料をぐんと下げられた、割に合わないと。
でも自分の市場価値をよく考えるとどうでしょう。深夜に牛丼屋さんに行くと、以前は立派な企業の管理職だったであろう初老の男性が、時給1100円程度で朝まで働いています。「俺はまだまだ働ける、人脈もある」と退職金を元手に会社を興したというのもよくある話ですが、うまくいったという話はほとんど聞きません。会社という看板がないと、誰も振り向いてくれないというのが現実なのです。
― 60歳まで頑張って勤め上げても、そこで待っている現実は厳しいわけですね。
藤川でも、そのことに50歳で気づいたらラッキーです。まだ10年あるわけですから、自分たちの目標に向かってお金の面も、そのほかのことも準備ができるはずです。
例えば私の知り合いに、「将来は自分が焼いた器を使う喫茶店を開きたい」という夢をもっていた人がいます。その人は会社勤めをしている時から窯に通い陶芸の修業をして、家の改装準備をしたり、奥さんは陶芸教室を開くための人脈づくりをしたりと、早くから計画的にプランを練りました。結果として会社を早期退職して、夫婦で目標を実現しています。
つまり、経済的な準備というのは、目標の先にある話なのです。特に子育てと住宅ローンが終わった夫婦は、目標は自分で見つけるものです。そして必要なお金の全体額が分かり、何年間でこのくらい貯めましょうという方針が見えれば、ご相談にこられた方の顔つきもがらっと変わるんですよ。将来に明るい展望が描ければ、たとえ今が辛くても前向きに頑張ろうという気持ちが生まれます。
――いかに未来を明るく描くかが、家計見直しのスタートであり、目的を達成するための手段なのですね。次回は見直しの具体的なポイントをうかがわせてください。(この項続く)
藤川太
ふじかわ・ふとし。生活デザイン株式会社代表取締役。1968年、山口県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社勤務を経てファイナンシャルプランナーに。「家計の見直し相談センター」で個人向け相談サービスを展開。著書に『サラリーマンは2度破産する』(朝日新書)など。
「家計の見直し相談センター」
「サラリーマンは2度破産する」 こちらから購入できます

(更新日:2008年02月25日)
※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。