――固定費のムダをなくしたら、その後でやりくり費の見直しという順序ですか。
藤川太 はい。お金の貯まらない家計というのは、給料から固定費が引かれ、その残りでやりくりし、その余ったお金を貯蓄に回すのですね。これではお金はなかなか貯まりません。まず収入から貯蓄を差し引いて、さらに固定費を差し引く。残ったお金でやりくりをすればお金が貯まりやすくなります。前回お話したように、将来の目標をもち、必要な貯蓄額を明確にすれば、つらいやりくりでもがんばることができるのです。
――ここまでの話は、家計からムダな支出をなくす見直しですが、お金を積極的に殖やすための見直し、資産運用についてもご意見をうかがわせてください。
藤川家計の体力によって投資資金は変わってきますが、基本的に私は、これからの時代は現役世代も年金世代も運用が必要だと思っています。それも国内にお金を留めておくのではなく、日本より成長率の高い海外の国の株や債券などにも幅広く投資する「国際分散投資」をすべきだと、私はお客様に提案しています。
現在の日本は「景気はいいけれど給料は上がらない」状態ですが、今後は「景気は後退し、給料も上がらないのに、物価は上がっていく」というスタグフレーションに入っていくことが懸念されています。その背景には、中国、インドといった新興国の急速な経済成長があります。これまで豊かな生活を享受していたのは、世界の人口の約2割しかいない先進諸国の人々でした。今後は莫大な人口をもつ新興諸国が、同じように資源を使い、エネルギーを消費し、食事にこだわり、世界的に資源や食糧が不足すると予測されるのです。
――国内の景気に関わらず、物価が上がっていく長期的な流れが、世界経済の中に見てとれるわけですね。
藤川国内経済が停滞する中で物価が上がり、お金の価値がどんどん下がれば、家計を見直すだけでは対応しきれません。自分の資産を日本国内だけに留まらせておくというのは、非常に危険だということです。もしお金があるのなら、そのお金を景気のいい国に出稼ぎに行かせなくてはならないと思います。
当然運用にはリスクは負いますが、長期的に見ればその国の経済成長と共に、投資した資産の価値が増えていく可能性は高いわけです。持っているお金が順調に運用できれば、家計の見直しもそんなにギリギリまで切り詰めなくても、生活できる水準って保てるんですよ。逆にお金のない人たち、お金がなかなか貯められない人たちは、さらに家計が苦しくなり、お金を持っている人との格差がどんどん開いていくと思います。
――収入がそれなりにあっても、お金を貯めていない人にとっては大変な時代ですね。無計画な家計のままでは、今の生活水準を長くは維持できなさそうです。
藤川 どんなご夫婦も、退職後は自分たちらしく豊かに生きたいと思っているはずです。しかし、豊かに生きるためにはお金の問題が必ずついてきます。これまでは豊かさというと、心の問題が大事にされていました。普通に働いていれば、お金の心配はそうなかったからです。しかし、「自己実現のために働く」といえた幸せな時代は、もう長くは続かないでしょう。昔のような「生活のために働く」時代に逆戻りするでしょう。ですからお金をもっているなら運用をした方がいいし、今はお金がないという人は、収入のあるうちに少しでも貯めて、将来に備えてほしいと思います
藤川太
ふじかわ・ふとし。生活デザイン株式会社代表取締役。1968年、山口県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社勤務を経てファイナンシャルプランナーに。「家計の見直し相談センター」で個人向け相談サービスを展開。著書に『サラリーマンは2度破産する』(朝日新書)など。
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(更新日:2008年03月10日)
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