夢に描くセカンドライフを実現するため、退職後に向けた資産運用の心得を紹介する「安心・ゆとりのセカンドライフマネー講座」(主催:朝日新聞社どらく編集部 協賛:三井生命保険株式会社PMMサービス事業本部)が、東京・有楽町マリオンスクエアで開かれました。
セミナー第1部では、資産運用に強いファイナンシャルプランナー神戸孝さんが、戦略的な資産運用術を指南。第2部ではマネープラン作成の専門家、三井生命PMM(パーソナル・マネー・マネジメント)サービスのファイナンシャル・アドバイザー塩野憲章さんが、セカンドライフの資金計画のためのポイントを説明しました。
私たちファイナンシャルプランナー(FP)がお客様のご相談に応じる時は、まず診断をし、それに基づいて処方箋(せん)を書き治療をするという、医者とよく似た手順をとります。中でも特に重要なのが、診断の中の現状を把握した上で、実現したいライフスタイルを明確にすることです。「将来どこに住むのか」「誰と、どうやって暮らしたいのか」といったことをうかがわなければ、我々の腕の見せどころともいえる「良い」処方箋が書けません。
ところが実際は、多くの男性は、リタイア後の暮らしを具体的にイメージすることが難しいようです。また、ご夫婦間で意思のすり合わせが行われていない場合も多いのです。まずはご夫婦できちんと話し合う必要があります。しだいに話が盛り上がり、たどり着きたい暮らし方、つまりゴールが見えてくるはずです。

あとはそういう生活をしていっても貯金が足りるかどうかを数学的に確認すればよく、我々はそれを「キャッシュフロー表」を作成して診断します。貯金が90歳まで残っていたら一安心。途中でお金が足りなくなるようなら、何らかの処方箋が必要になるわけです。処方箋の書き方には「支出をへらす」「収入をふやす」「運用」の三つの切り口がありますが、今日は運用のお話をします。
運用の処方箋は、まずゴールにたどり着くまでに必要なお金の額や運用の期間、現在の貯蓄額、毎年の積み立て可能額や取り崩す予定額などから、運用で目標とする年利率を何%にするかを算出することから始めます。弊社のお客様の場合、2−4%で充分というケースが多いです。もしも1%でいいなら、国内の定期預金や債券だけの運用でもOKでしょう。ところが3%必要となってくると、収益性が見込める商品とも上手に付き合うことが求められます。ここで多くの方はすぐに「今ならどれを買えばいいのか」と考えがちなのですが、これが失敗につながりかねません。
「今ならどれを」の裏側には、手っ取り早くもうけたいという心理が働いているからです。しかし実際は、運用期間が短ければ短いほど、マーケットで素人が勝つのは難しくなってしまいます。資金や分析力で劣る個人投資家は情報、要するにうまい話を求めがちです。うまい話などというものは絶対にありません。では、個人投資家がマーケットで勝利するための武器とは何でしょうか。それが「時間」なのです。「終わりよければすべてよし」というのは、個人投資家の特権。何を買えばいいのか、答えは出ていると思いませんか。「いつか上がるもの」を買う。これが時間を武器にできる個人投資家の王道です。以前はそれが土地だったわけですが、人口の減少が急速に進む今後はきびしいでしょう。いくつか候補がある中で、一番確率が高いと私が思っているのが株式です。

長期投資では複利効果を味方につけることが重要です。しかし運用がマイナス側にぶれると、複利効果はそのマイナス幅をさらに拡大させる方向に働きます。つまり大切なのはブレを小さくして負けにくい運用を行うこと。そのために必要なのが、値動きの異なる資産を組み合わせる「分散投資」の考え方です。例えば、過去25年間のTOPIX(東証株価指数)とアメリカ国債の値動きは、多くの場合逆方向です。ただ、ブレ幅はTOPIXの方が大きいので、日本株にチップを1枚置くのと同時に、外国債券には2枚置くといったイメージで投資先を分散するのが基本形。ルーレットで赤が出れば黒は出ないということを百も承知で両方にかけ続けるわけですが、それは大敗を避けるため。さらに、運用資産を国内外の株と債券の四つに分ければ、より負けにくくなる。これが「国際分散投資」といわれる運用方法です。
ただ、それでも負ける年は出てきます。その負けを消すために行うのが長期投資です。図1は日本とアメリカの株と債券の四つの投資対象に25%ずつ分散投資をして、保有期間を1年、5年、10年の三つのケースで見た場合のグラフです。10年間保有した場合には、いつ始めても収益率が5%前後になっています。これが、退職金など失ってはいけないお金を運用する場合の王道といえる長期+分散投資の効果です。ポートフォリオを作る基本スタンスは、「負けにくい状況を作った上で、追い風を待つ」こと。具体的にどの商品を買うかはその後で考えることだということを、ぜひ知っておいてください。
(FPアソシエイツ&コンサルティング作成)
神戸孝(かんべ・たかし)さん
1956年埼玉県生まれ。早稲田大学法学部卒。80年三菱銀行入行、87年日興証券入社後は、一貫してFPサービスを中心とするマーケティング手法の企画・開発に携わる。99年FPアソシエイツ&コンサルティングを設立。自ら個人・法人などのコンサルティングに加え、各種講演会、研修会講師なども行う。著書に「ほんとうに真っ当な資産運用」(朝日新聞社)、「団塊世代の資産運用」(インデックスコミュニケーションズ)など。

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