Kさんの希望する物件が新築だとすると、価格的には3500〜4000万円くらいは必要でしょう。その場合、現在の家の売却代金と金融資産の500万円に加えて退職金2100万円にも手をつけなければならず、買い替え後の生活が不安です。買い替えするなら、築浅の中古マンションも候補に入れたり、手持ちの資金を減らさない住み替えを考えましょう。

畠中雅子さん
新聞・雑誌・インターネットなどに20本を超える連載やレギュラー執筆を持つほか、セミナー講師、講演活動を行うファイナンシャルプランナー。3児の母として生活実感あふれるマネーアドバイスに定評がある。著書は「教育貧民」(宝島社)、「なぜか幸せな人のお金のルール」(幻冬舎)ほか。


「自宅がだいたい2000万円ぐらいで売却できて、2100万円の退職金の一部と預貯金で3000万円ぐらいの都心のマンションを購入したいんです」と話すKさん。都心・駅近・60〜70平方メートルの2LDKを希望されています。といっても、不動産会社で自宅の販売価格の相場を調べたわけでもなく、これまた希望にすぎません。たとえ2000万円で自宅が売れたとしても、今の状況でKさんの希望条件に見合う物件は3500〜4000万円程度と予想されますから、購入すると手元に残るのは所有する国債を含めても1000万円を切ってしまうでしょう。これでは、先々があまりに不安です。
退職金というまとまったお金が入るからといって、舞い上がるのはとても危険。まず行うべきは、確実に入るお金(年金や失業給付金など)と出るお金(健康保険料や妻の国民年金保険料など)と、退職後の毎月の予想生活費を1万円単位までしっかりと把握しましょう。現実的なお金の流れが見えてくれば、都心で駅近の新築マンション購入は、慎重にならざるを得ないはずです。

「住宅ローンを組めば、乗り切れるのではないか」というKさんの見通しは甘過ぎます。現役時代の数千円と収入が激減する退職後の数千円では重みが全然違います。特に、60歳で退職してからの数年間は収入が不安定な時期なうえに、現役時代のお金の使い癖が抜けない時期なので、赤字が最も出やすいのです。そんな状況なのに、月々の固定支出を増やすのはナンセンス。セカンドライフの資金計画は、退職直後に手持ちの資産を大きく減らさないことが原則です。このポイントを外さないで、どうやったら都心に住み替えられるかを検討しましょう。


購入は難しいと考えたKさんは、次に「リバースモーゲージで自宅を担保にし、その分で都心のマンションを賃貸するというのはどうでしょう?」と聞いてきました。一時期もてはやされたリバースモーゲージですが、自治体が行う場合は下限額が高く設定されていて、土地代だけで5000万円以上にならないと適用されないケースも。残念ながらKさんの自宅ではリバースモーゲージを簡単には利用できないと思います。また、たとえ民間の金融機関から融資を受けられたとしても、生存中に融資額を超えてしまい、子供達に借金という財産を残してしまう可能性もあります。
都心に住むためには、今の自宅を賃貸し、その賃料内の賃貸物件に入居するという方法も考えられます。最近では高齢者専用賃貸住宅もありますので、こうした公的な物件を利用するのもひとつの方法です。どうしても赤字が出てしまう場合は、その年間赤字額×平均余命の分を退職金から取り置いておき、その分は運用には回さないようにしましょう。「赤字分を運用で稼ぐ」という皮算用は禁物です。

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