退職後はあこがれの海外暮らしを、と考える人は少なくないようです。ここ数年、拠点は日本に置き、国内外を行き来する「ロングステイ」が注目され、中高年にとって海外は身近になっています。でも、医療事情が全く違う国で、病気になると高額な医療費がかかるようです。年齢を重ねれば体調を崩すリスクは高まります。もしもの時のために、どう準備すればいいのでしょうか。
ロングステイで人気のマレーシア。高原の避暑地、キャメロンハイランドは、冬には約200人の日本人が暮らし、下見を兼ねた体験ツアーで訪れる人も多い。長期滞在する日本人で作る「キャメロン会」の古川作二会長は、「会員が健康トラブルの手助けをする機会が多い」と話す。
野犬にかまれたり、食物アレルギーで意識不明になったり。脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞、骨折も少なくない。古川会長は「結局は自己責任。準備は万全に」とくぎを刺す。外務省の統計では、05年に大使館などが病気で支援した930人中、50代以上は49%。死者396人のうち、50代以上が72%に上る。多くが心臓病や脳疾患という。
海外で受診すれば基本的には自由診療で全額負担。健康保険で帰国後払い戻せるが、米国では心臓手術に1千万円超えることも。JTBロングステイプラザの細貝裕幸マネージャーは「現金決済や入金のあてがなければ治療を始めない国が多い」と注意を促す。
長期滞在なら、海外旅行傷害保険でカバーが可能。支払いは、キャッシュレスと帰国後清算の2種類がある。クレジットカードにも保険がついているが、治療や救援者費用の補償が手薄な場合があるという。
救援者費用とは、親族や日本からの医師、看護師の交通費と宿泊費、治療途中での帰国費など。マレーシアで脳梗塞になった男性の場合=図=、現地の治療費に加え、救援者費用が大きかった。家族は「保険がなければ帰国できなかったかも」と振り返る。細貝さんは、「病状などによりチャーター機を利用した場合、1千万円単位になることも。契約内容は確認して」と話す。
では、事前に何に気を付ければいいのか。海外赴任者を多く診察する「新日本橋石井クリニック」の石井光院長は「中高年は高血圧など隠れた病気がある可能性が高い」と指摘する。
まず、ドックなどで生活習慣病やがんがないか調べる。高血圧なのに風邪や胃炎と診断され心筋梗塞で死亡した例もあるので、カルテや処方箋(しょほうせん)を英訳して携帯を。言語が違っても英語なら手がかりになる。忘れがちなのが予防接種。昨年、フィリピンで狂犬病に感染した60代2人が死亡した。破傷風や肝炎にも注意を。
病院情報は、外務省のホームページなどにあるが、キャメロン会のようなグループから生の声を聞くのも手だ。下見では病院から滞在地の距離、診療内容、日本語スタッフがいる曜日などを確かめておきたい。
友人たちの間で「海外暮らしもいいわね」という話は出るが、踏み切った人はいない。海外暮らしは「元気」が前提。夫婦が元気なうちはいいが、1人になってしまっては面白くない。何より、介護や医療が必要となる高齢になった時こそ、日本にいた方がいいと思う。国によって医療態勢が違うと思うし、日本語が通じないなど言葉のことを考えると不安です。
(川崎市 主婦 60歳)
退職後、冬の間は海外暮らし。かかりつけ医には事情を話して事前に薬を必要な分出してもらい、処方箋も英訳して持って行く。たびたび病気になるが、病院は日本のガイドブックや現地の情報から選んでいる。先進国だからといって医療が先端とは限らないし、国によっては日本と同様の治療を求めてもやってくれない所が多い。豪州で23万円かかったが効果がなかった治療に、マレーシアでは注射1本2万円で治ったことも。医療費はクレジットカードに付帯した保険でまかなっているが、出発の直前には、最新の契約内容を手に入れ、補償額や目的地近くの連絡先を確認するようにしている。
(埼玉県蕨市 女性 68歳)
ご意見や体験をお寄せ下さい。ファクス(03-5540-7354)やメール(sonaeru@asahi.com)でも投稿できます。住所、名前、年齢、職業、電話番号を添えて下さい。
(更新日:2007年05月03日)
※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。