財産の多い少ないにかかわらず、相続の手続きはなかなか面倒です。相続人同士のトラブルを防ぐため、亡き後の財産の処分方法を指定しておく遺言書をつくる人が増えています。どんな場合に特に遺言をつくるといいのか、いくらかかるのかを調べてみました。
相続財産をめぐる争いは過去35年間で倍増。家庭裁判所が扱う遺産分割事件は06年に約1万2千件だ。
「その死に方は、迷惑です」(集英社新書)の著書もある本田桂子・遺言相続サポートセンター副理事長によると、特に遺言を残した方がいいのは、次のような事例という。
まず、子どもがいない夫婦。両親や祖父母が亡くなっている場合、民法では配偶者は4分の3、きょうだいは4分の1を相続する権利がある。例えば妻は、夫から生前に「2人で築いた財産。おれが死んだら全部おまえのもの」と言われていても、夫のきょうだいが主張すれば事態は変わる。
手続きも大変だ。亡くなると本人名義の預貯金の口座取引は停止する。妻の一存で解約や名義変更はできず、相続権のある人全員の同意を記した書面や印鑑証明書などが必要になる。マイホームの名義変更も同じ。相続人の数が多かったり、遠くに住んでいたりすると一苦労だ。
遺言書があれば、原則として財産を受け取る人の分だけ書類を用意すればよく、手続きが簡単になる。
また「内縁の妻」「息子の妻」には民法上の相続権がない。「長男亡き後も面倒をみてくれたから、何か残してあげたい」と思うなら、遺言書を残そう。
不動産など分けにくい財産もトラブルのもと。子どもが相続分を現金で得ようと、家を売るよう迫るケースもある。「妻には家を。預貯金は、妻と子どもの4人で均等に分けなさい」などの遺言書があるとよい。
ただし、遺言書があっても配偶者や子どもなど法律で相続権のある人は、最低限の取り分を主張する権利がある。「関係者が納得しやすい遺言書をつくることが大切です」と本田さん。
では、どうすれば遺言書をつくれるのか。
一般に、自分で書く自筆証書遺言と、公証役場でつくる公正証書遺言がある。
自筆証書は金もかからず手軽だが死後、家庭裁判所の「検認」が必要。本人の筆跡や内容をめぐって争いが起こる可能性もある。
公正証書は、裁判官や検事など出身の「公証人」に遺言書の内容を相談してつくるため、様式不備で無効になる可能性は低い。保管もしてもらえる。日本公証人連合会によると、06年につくられた公正証書遺言は7万2千件。35年間で約4倍に増えた。手数料や用紙代はかかるが、相談は無料。証書づくりに必要な証人も紹介してくれる。
弁護士や司法書士のほか、必要書類をそろえる手続きでは行政書士、税務面では税理士に頼むのも手だ。「多少お金はかかってもいいから、面倒な手続きはお任せしたい」という場合は、信託銀行の「遺言信託」もある。
父が逝って父名義だった土地の登記を書き換える必要に迫られた。知人のアドバイスに従って私の名義に書き換えることにしたが途端に母が難色を示した。母娘同居で配偶者もいないので形だけ私の名義にしても何の問題もないと思ったが、頭では理解していても老後の不安がよぎったようだ。何度も書き換える手間と経費を省くために、登記は私への一括という形で納得してくれた。だが、形式だけのこととはいえ相続となると、実の娘でも複雑な感情がわくのかと知った出来事だった。
(熊本県氷川町 女性 43歳)
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(更新日:2007年07月20日)
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