自分が亡くなった後のことは遺言で残せます。では、認知症などで十分に判断できなくなった場合には、だれが財産の管理や介護の手配をやってくれるのでしょうか。そんなときに備えるのが成年後見制度の一つ、任意後見制度です。
成年後見制度は法定後見と任意後見の二つがある。
「任意後見は、自分の老い先を自分でプロデュースできる仕組みです」。司法書士らがつくる成年後見センター「リーガルサポート」の理事、井上広子さんは語る。元気なうちに自分で信頼できる後見人や頼む範囲を選んでおく。本人の判断能力が衰えた後に、家庭裁判所が後見人を選ぶ法定後見より、自分で「老い支度」をする色彩が濃い。
主な手続きは図の通り。何を頼むかは、どういう暮らしをしたいか次第だ。契約書には、細かいことは盛り込めない。井上さんは、契約時に自分のこだわりを記したライフプランか覚書を別につくり、半年から1年おきに更新することをすすめる。「ぎりぎりまで自宅で暮らしたい」「早めに施設に」「生活費が足りなくなったら、定期預金からまず充てて」などと記すと後見人が動きやすい。
「誰に頼むか」は、「キャッシュカードを誰になら預けられるか考えてみて」と井上さん。「やっぱり身内」とか「ビジネスライクにやりたいから専門家」とか、人によって違う。財産管理は専門家、介護の手配は身内、と複数を後見人にすることもできる。
費用は、契約時に、公正証書の作成手数料や印紙代などで後見人1人につき2万〜2万5千円程度。任意後見をスタートさせるときの家裁申し立てにかかる費用は、5千円前後。
実際に始まってからの報酬の額は、契約時に決めておく。専門家に頼む場合、任される財産の金額や仕事の内容、地域によって変わる。弁護士だと「日常業務なら月3万〜5万円が目安」(東京弁護士会)。身内なら「報酬は払わなくても、遺言で相続額を手厚くして報いる例もある」という。監督人への報酬は、裁判所が残された財産と監督業務の内容を見て決める。
中山二基子弁護士は、注意点として「任意後見人を頼む人に、仕事の内容を十分理解してもらうこと。20歳以上若い人に頼むこと」を挙げる。後見事務は煩雑だし、若い人だと比較的後々まで頼れる。
また、本人の判断能力が衰えているのに、家裁への申し立てを先延ばしにすると、後見予定者を監督する人もつかないため、トラブルのもとになる。「後見はあまり気軽に頼んだり、頼まれたりしない方がいい」
東京都の品川区社会福祉協議会は、法人として任意後見人を引き受ける。後見がスタートすると、本人の資産状況に応じて月5千〜3万円の報酬で運営。外部チェック機関も設けて、制度の悪用を防ぐ。法人なので、病気や死亡の心配もない。同様の取り組みはまだ少数だが、徐々に広がっている。
任意後見制度を利用してみようかと考えたが、いろいろと手続き費用などがかかり、後見人の選出が難しい。娘がいるので、私の元気なうちにすべてを娘にまかせてしまえばいいのだが、もし娘が私より先に逝くかも、と考えると迷う。私は十数年前、夫の急逝にあい、夫の父親の相続問題で筆舌に尽くしがたい辛酸をなめさせられた。人の明日はわからない。後見人より、私の方が後に残ってしまったら、と思うともう先に進まない。せっかくの制度だが、目下思案中だ。
(さいたま市 元農業女性 78歳)
病気がちだった独り暮らしの68歳の妹が5月に意識不明になった。回復後の介護サービス手配と、預貯金の管理のために法定後見の手続きをとったが、直後に妹がなくなった。「手続きに費やした時間を介護にさければ」「時間と費用が失われた」とむなしさが残った。反省点は、妹が認知症と認めたくない意識が働き、手続きをとるまで何度も尻ごみしたこと。また、手続きに必要な医師の鑑定を受けさせるため、妹の了解を得るのに、時間を費やしたのも大きかった。
(横浜市 無職男性 70歳)
来週も「成年後見制度」です。高齢などで判断力が十分でなくなった時どうするか。ご意見や体験をお寄せ下さい。ファクス(03-5540-7354)やメール(sonaeru@asahi.com)でも投稿できます。住所、名前、年齢、職業、電話番号を添えて下さい。
(更新日:2007年12月14日)
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