「認知症になった母の預金をおろしにいったら、銀行で拒否された」。そんな相談が市区町村の窓口で増えています。十分に判断できなくなった人の財産管理などを代行する成年後見人。事前に後見人を決めていない場合、家庭裁判所が決めるのが法定後見制度です。最も多いのは親族ですが、司法書士などの専門家や一般人による「市民後見人」がなることもあります。
法定後見には、本人の判断能力によって「補助」「保佐」「後見」がある。「補助人」は本人に判断能力がある程度残っている場合で、申し立てには本人の同意がいる。「後見人」は全く判断できなくなった場合。医師の診断に基づいて、裁判所が選任する。
家裁に後見や保佐などの審判開始を申し立てた件数は、06年度は計3万2269件で前年度より約5割増。大半は「後見」で、後見人等の8割が親族。認知症となった親を子どもが後見するなどのケースだ。司法書士や弁護士、社会福祉士ら第三者も2割弱ある。
親族が後見人となる時、最初にぶつかる壁が手続きの煩雑さだ。本人の預貯金通帳のコピーや株、不動産などの財産目録を作るほか、後見人候補の経済状態や学歴、家族状況も提出する。申し立てに対する親族全員の同意の有無やその理由も問われる。裁判所の調査官らによる本人や候補者の面接もある=図。
費用は印紙や医師の診断書、戸籍謄本などで平均2万〜3万円。申し立て後、裁判所が医師に書いてもらう鑑定書の費用がさらに数万〜10万円ほどかかる。
東京都町田市は、健康福祉部や地域包括支援センターなどでこうした手続きの相談にのっているが、「相当な決意がないと挫折します。手続きがわからなくて5〜10回も来る人もいます」と窓口担当の社会福祉士、高木粧知子さん。
後見人は、財産の管理と、生活に必要な業務の手配や契約が主な仕事で、金融機関に本人の預貯金や借金の有無を照会したり、施設への入所契約を結んだりできる。家裁が認めれば、専門家と一緒に後見業務をすることもできる。
専門家に後見人になってもらう方法もある。司法書士でつくる「成年後見センター・リーガルサポート」では、06年度新たに1416人が後見人や保佐人になり、継続案件も含めると計3700件を超えた。常任理事の木村一美さんによると、交通費などの実費はそのつど本人の預貯金からもらう。報酬は後見人の申し立てに基づき、裁判所が「活動報告書」や本人の資産に応じて、後日定める。このため月千円もあれば5万円もある。申し立て手続きからすべてを専門家に頼んだ場合、実費を除く報酬は、司法書士だと5万〜10万円が目安という。
本人に身寄りがない時は市区町村長が申し立てる。東京都世田谷区や町田市では、昨年から、研修を受けた一般市民による「市(区)民後見人」も活動を始めている。
広島の施設にいた94歳の母の認知症が進み、2年前兄弟と話して後見人の申し立ての準備をした。「保佐人」を希望したが、医師の診断書では症状の軽い「補助人」だった。隔たりを埋めるため裁判所から何度も書類や出頭を求められ、そのつど広島に帰省し、面接のため母を連れ出すなど多大な労力がかかった。裁判所から再度、別の医師の診断書を求められた時、裁判所の姿勢や、さらに労力と経費をかけることに疑問を感じ、申請を取り下げることになった。
(埼玉県 男性 66歳)
2年前、一人暮らしのおばが認知症のため、司法書士が後見人についた。大腿(だいたい)骨を骨折していたおばを、施設から特養ホームに移す時、節約のためか車いすのまま乗れるタクシーではなく、後見人の車で寝袋に入れて連れて行こうとした。特養に入所後は、おばが住んでいたアパートの私物が処分され、衣類や思い出の品を失った。回復の見込みがないとはいえ、あまりにも悲しい。後見人は財産管理のノウハウに加えて人権や福祉の心も必要と思う。
(神奈川県 女性 52歳)
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(更新日:2007年12月21日)
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