親しい人だけで送られたい、葬式では趣味仲間の社交ダンスを――。「自分らしい旅立ち」を企画したい人が増えています。それをかなえようと、葬祭業者やNPO法人が、生前に準備できるしくみを用意しています。チェック体制はあるか、家族の了解があるかは重要です。
家族葬や無宗教葬、生演奏による音楽葬、リビング葬、葬式をせず火葬だけで送る直葬……。葬送についての細かな要望が高まっているようだ。
「小さなお葬式」「よくわかる生前準備」の著書がある北村香織さんは「あわただしくて十分にお別れできなかったとか、費用がかさんだとか、家族が後悔することが多く、その反動ではないか」と分析する。
日本消費者協会の調査では、飲食費や宗教者へのお礼を含めた葬儀費用は、全国平均で約240万円、首都圏で約310万円だが、自由な葬儀は内容によっては数十万円からできる。
自分が望む形の実現のために一番簡単な手段は書き留めることだ。「エンディングノート」「遺言ノート」といった冊子が市販されている。形式はなく、希望する方法や予算、喪主といった項目を書けばいい。法的拘束力はない。
公証役場で作る公正証書遺言は法的拘束力はあるが、これも必ず実行される保証まではない。より確実な方法は、公正証書や信託で葬儀を扱う法人と契約を結ぶ「生前契約」だ。北村さんは「解約できるか、契約実行は誰がどう確認するか、費用はいつ払うかなどの確認を」と注意する。
契約が果たされたか、チェックするしくみを採り入れる会社やNPOもある。93年に発足したNPO法人「りすシステム」は契約や遺言を公正証書にし、別のNPO法人が監視する。代表理事の松島如戒さんは「これまで家族や地域が担ってきた死後事務の代行です」と言う。希望を実現する支えとなり身寄りのない人には心強いが、加入者は全国で約2300人と多くはない。申込金や契約金に20万円必要で、公正証書作成のために証人を2人探すなど手間も必要だ。
比較的手軽なのは、葬儀の内容や費用について業者に相談し「生前予約」をしておくことだ。多くは会員制をとる。全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)によると、地方では葬式に関する生前相談が増加中という。都会に出た子どもたちに迷惑をかけたくないと思う人が多いらしい。
全葬連は保険会社と組んで、葬儀費用や葬儀内容について事前に予約できる「if共済会」を作り、加盟約1500社と提携している。予約だけだと、本人の死亡と同時に法的効力が失われ、不確実な面があるものの、遺族の希望を生かす余地も生まれる。
「葬式は遺族のグリーフケア(悲しみの癒やし)の意味合いもあり、本人のためだけではないことを忘れないで」と北村さん。家族がいる場合はよく話し合い、生前契約や予約をしたら、その事実ぐらいは周囲に伝えておきたい。
11月30日、65歳で夫は天国へ旅立った。昨年10月に見つかった食道がんと闘い、最期は45日間在宅で過ごし、安らかに逝った。12月2日前夜式、3日告別式を終えたが、会場の手違いで、前夜式で用意した食事を誰も食べずに帰ったことを知り、驚きと悲しみ、悔しさと怒りでいっぱいになった。そのとき近所の友人に「結婚式は準備ができるから100%よかったと言えるが、お葬式はそんなことがあってはおかしい。失敗があって当たり前」と慰められた。本当にお葬式に成功はないと思った。
(東京都 無職女性 61歳)
2年前、夫に人工呼吸器がつけられたとき、これで終わりと思った。元気なときに「葬式を出して欲しい。戒名もいる」という意向を聞いていたので、友人の勧めで葬儀屋に相談し、見積もりを作ってもらった。「そんなものを出して」と周囲に言われたが、いざというときあたふたしないためにも、よかったと思う。その後、この見積もりが用なしでありますようにと祈りながら日々過ごしている。私自身は葬式も戒名もいらないと思っており、家族に頼まれ、その旨を書き記した。
(札幌市 理容業女性 56歳)
(更新日:2007年12月28日)

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