「農業をしてみたい」「山里暮らしにあこがれる」。退職を控えた人からこんな声を聞きます。定年後に農業や家庭菜園に挑戦する場合、どんな点に注意すればいいのでしょうか。
全国新規就農相談センター(東京都港区)の相談員、西山暁さん(62)は「定年後から独立して農業を始めるのは厳しい」と話す。同センターと都道府県の窓口には、若者も含めて年間約1万3千件の相談があるが、就農するのは約400人だという。
本格的に始めるにはかなりの準備が必要だ。情報を集め農業体験をした上で、どこでどんな作物を栽培するかイメージする。そして技術を学び、農地や機械を確保し、営農計画を作り、農地を得る。始めてから作物が育ち、軌道に乗るまで2〜3年かかる。
研修費や機械・施設の費用が無利子で借りられる国の就農支援資金制度や自治体の融資制度もあるが、年齢に条件がつくことが多い。農林水産省の担当者は「このほか、生活費や収穫がなかったときの費用に、若い人なら1千万円は用意した方がいいと言われる。定年後ならやや少なくてすむでしょう」と話す。
西山さんは「移住するなら、小規模の農園から始める。地元の人と信頼関係をつくり協力者が見つかったら本格的な農業に移行しては」と助言する。農業法人でパソコンを教える、農家レストランで調理するなどこれまでの経験と農業を結びつけた例もあるそうだ。
「一年間、園芸試験場に通って栽培の基本を習った。仲間ができて情報交換した」「集落の総会で紹介してもらい、とけ込んだ」……。団塊世代を中心にした就農の取り組みを、東北農政局が昨年、冊子とサイトで紹介した「人生二毛作 田舎暮らしの楽しみ」には、農業を始めた年齢別に約70人の経験が並び、参考にできる。
「定年後」に光を当てた自治体の支援策もある。
愛知県は今年度、定年後の県民の就農支援事業を始めた。人手不足の農家の農地を守る狙いもある。県農業経営課によると、農家に生まれ別の仕事に就いた人が、定年を機に農業に入るケースも多い。経営モデルは「年金を生活の基盤とし、農業所得は年100万円程度」という。農作物の換金がハードルになるので、直売所などの販売ルートに乗れるよう支援する。
岡山県内の自治体や農協は「地域帰農塾」を開いている。高梁市の場合、ブドウやトマトの栽培を学べる。県外からも参加可だが、将来の移住が条件だ。
趣味程度に、という人には市民農園がある。小屋付きの農園を借りると、週末に通って農作業ができる。移住して家庭菜園を始める場合には、体験ツアーへの参加など現地訪問がかかせない。日本総合研究所の矢野勝彦・主任研究員は「先輩から体験談を聞くと、気候や地域性がよくわかる。地域にとけ込み、交流する努力が必要です」と話す。
退職後、シルバー人材センターの家事援助の仕事を始めて3年目です。現役を退いても、社会との接点を持ち続けたいと思い、始めました。したいことが際限なくあり、終了時間に焦りを覚えることもしばしば。そんなときは「えーい、きょうはちょっぴりボランティアタイム」と自分を納得させます。「きれいになった部屋に入るのは幸せ」と言われ、私は喜んでもらえる幸せをかみしめます。助け合うシルバー人材センターの仕事を、できるだけ長く続けたいと思います。
(東京都 女性 65歳)
都会で長年働いた。退職後に、念願のいなか暮らしをしている。天気の良い日は野菜を作る。コメ以外のものは、ほとんど作れるようになった。食べきれない分は近所の人や都会の友人におすそわけし、喜ばれている。雨の日は、小屋で趣味の木彫りをしている。作った髪飾りやおもちゃは近くのJA直売所で販売。最近では家まで買いに来てくれる人もいるし、温泉の土産店から注文が来るようになった。定年後は、収入を得るよりも、人との出会いを楽しんで暮らしている。
(群馬県 男性 63歳)
来週も「定年後の働き方」がテーマです。ご意見や体験をお寄せ下さい。ファクス(03-5540-7354)やメール(sonaeru@asahi.com)でも投稿できます。住所、名前、年齢、職業、電話番号を添えて下さい。
(更新日:2008年02月15日)
※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。