いよいよ暮れも押しせまり、大掃除や正月用品、食材の買い出しなど、何かと慌ただしい季節になってまいりました。
正月料理で、おせちと並び楽しみにしているのが、雑煮をいただくこと。昔は、大人も子どもも、一人で5個も6個も餅を食べたものでした。また、年末になると、町のあちらこちらで、臼と杵(きね)を使って餅つきをする人たちの姿が見られました。ご近所におすそ分け……と、つきたての餅が届いたりしたものですが、最近は、残念なことに、そうした光景もあまり見かけなくなってしまいました。
わが家では、元旦の朝に、小松菜と鶏肉を入れたすまし汁仕立ての雑煮を作ります。三つ葉やゆずも添えますが、いたってシンプルな雑煮です。質実剛健をむねとした徳川家康の好んだ雑煮は、具が菜っ葉(小松菜)と少量の削り節だけで、菜は「名をあげる」に通じることから用いられたといわれています。おめでたい日にふさわしいので、わが家も家康にならい、小松菜は必ず加えます。
そして、元日の夜に作るのが、沖縄料理の「ソーキ汁」に焼いた角餅を入れた雑煮です。わたくしは両親が沖縄出身なので、幼いころから慣れ親しんだ味。ソーキとは、沖縄のことばで、豚の骨付き三枚肉のことをいいます。いわゆる、スペアリブですね。ソーキ汁は、この骨付き三枚肉を煮込んで作る汁物です。

肉は余分な脂を落とすため、いったん、たっぷりの湯でゆでこぼしてから使います。アクをすくいながら、弱火でじっくりと1時間ほど、肉がやわらかくなるまで煮たら、やや大きめにカットした大根と、結んだ早煮昆布を入れ、さらに30分以上煮込みます。味つけは、沖縄の酒、泡盛と塩、しょうゆだけ。骨付きの豚肉から、コクとうまみたっぷりのいいだしが出ますので、余計な味つけは不要です。こんがりと焼いた餅を入れたら、アツアツのところを器に盛り、おろししょうがをのせてできあがり。
沖縄では特に正月に雑煮をいただく習慣はありませんが、このソーキ汁は、お祝いごとや、人を招いたときには欠かせない献立のひとつです。ソーキ汁に餅を入れた雑煮は岸家の名物料理でもあり、毎年、大鍋で作って、お客さまにふるまいます。なにしろ、これを目当てにわが家を訪れる人も多いほど。
正月二日目は、夫の実家が愛知県ですので、八丁みそ仕立ての雑煮にしてみるなど、趣向を変えて、さまざまな味を楽しみます。
このように、日本には、全国各地に特色のある雑煮が存在します。大きく分けると、関ケ原を境に、東は焼いた角餅でしょうゆ仕立て、西は水からゆでた丸餅でみそ仕立ての雑煮が多いといわれますが、さらに細かく地域別にみていくと、実に面白い雑煮があります。
わたくしがこれまで出合った雑煮の中で最も驚いたのは、香川県の「あん餅雑煮」です。白味噌仕立てのつゆの中に、丸餅と大根、にんじんなどの具が入っており、青のりがトッピングされているのですが、この丸餅の中には、その名の通り、あんこが入っているのです。なじみがないと摩訶不思議に感じますが、讃岐では定番の味です。

甘い雑煮といえば、島根県や鳥取県などに見られる「小豆雑煮」もあります。やわらかく炊いた小豆に砂糖を加え、ゆでた丸餅を入れたもの。野菜などの具は入らず、ぜんざいのあっさり版といったところでしょうか。
奈良県の一部には、きな粉を別添えにして出し、雑煮の餅を取り出して、つけて食べるという習慣があります。また、クルミ餅が名物の岩手県では、きな粉ではなく、クルミだれが添えられます。
新潟では具にサケとイクラが入っており、信州や飛騨、九州などでは塩ブリが必ず入ります。このあたりも、正月に新巻きサケを用意する地方と、塩ブリが欠かせない地方で、それぞれに特徴が出ており、興味深いものです。
近ごろは、おせち料理や雑煮を好まない若者や子どもも多いと聞きます。スーパーや飲食店も元旦から営業するようになり、正月から昼はカレーライス、夜は焼き肉屋で食事……などという話を耳にすると、残念に思います。日本の伝統行事、伝統食は大切に守り続けていただきたいもの。それぞれの地域の味、家庭の味を、どうぞ子どもたちにきちんと伝えて、新たな気分で新年をお迎えください。
(更新日:2007年12月21日)

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