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どらくスペシャル

江戸前を歩く
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東京湾のいま〜内房の漁港から

古くから江戸っ子に親しまれてきた「江戸前」の海。多様な水産物を水揚げする東京湾は、今でも首都圏の胃袋を満たしている。近年は水質改善が進んだといわれるが、高齢化などでその漁業の先行きは必ずしも明るくない。一方で、東京への近さを最大の武器に、自治体や漁協は水産物のブランド化や観光と組み合わせた町おこしをねらう。身近な半面、意外に知られていない江戸前の海、それを取り巻く人々の暮らしに触れてみた。

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地図
© koka-G 

東京湾アクアラインを抜けて一路、内房を南へ。午前8時、千葉県鋸南(きょなん)町の保田漁港に着くと、漁を終えた船が次々と入港してくるところだった。クレーンで網を吊り上げ、ベルトコンベアへ。左右に並んだゴム手袋の男たちが、目の前を運ばれるさまざまな魚を素早く選別していく。カタクチイワシ、サバ、トビウオ、アジ、コノシロ。東京湾の魚種は豊富だ。

素朴な入札風景

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入札結果を見比べる市場参加者たち。「こっちが高い」などの声があがる=保田漁港で

陸揚げと並行して、入札が進んでいく。仲卸商の男たちは、二つ折りの小さな黒板を手に持ち、魚を目利きして回る。チョークで買い値を書き、他人に見られないよう黒板を折りたためば終わり。あとは壁にかけた黒板を一斉に開き、一番高い値段はどれか、みんなで見比べる。落札者が決まったら赤いチョークで印をつけ、魚が引き取られていく。素朴といえば素朴、しかし「平等」のルールが貫かれている。

沿岸を北上し、いくつかの市場を経て天羽漁協竹岡支所(富津市)へ。東京湾沿岸でも、とりわけ高級素材が揚がることで有名な市場だ。1メートルを優に超える巨大なタチウオが、銀白の身を光らせていた。観音崎沖の深場からはえ縄漁で揚がることが多く、「浜値でキロ6000円をつけたこともある」(市場関係者)という。30センチ級のキスも大量に揚がっていた。「江戸前のキスとタチウオといえばここだよ」(同)。

この市場では保冷用に、海水から作った氷を木づちで割って使っている。手間はかかるが、海水の方が溶けにくく、品質保持にすぐれるという。

「江戸前」の復活は?

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銀色に輝くタチウオ=天羽漁協竹岡支所で

高度成長期に工場・家庭排水などで水質が悪化した東京湾。1960年に19万トンあった総漁獲量は70年代にかけて急落、90年代半ばからは2万トン前後で推移している。近年は環境改善が進んでいるといわれ、流入する河川の環境基準達成率は、1995年の49%から2004年は84%に向上した。だが、漁業者の減少もあり、漁獲量の急回復はみられない。

船橋市の沖合で底引き網漁を営む60代の男性は「見た目の透明度は一時より良くなったが、埋め立てで漁場が減っていることの方が問題」と話す。「江戸前」の豊かな海が復活した、と素直に喜べる状況ではなさそうだ。

「江戸前」の定義もあいまいだ。古くは羽田沖〜深川沖を指したともいわれるが、水産庁の「豊かな東京湾再生検討委員会」の分科会は2005年、東京湾全体で取れた魚介類とする提言を打ち出した。しかし、より江戸に近い東京内湾(三浦半島・観音崎―房総半島・富津岬より内側)の漁師たちには、「自分たちの海こそ江戸前」との思いもあるようだ。関東農政局の統計資料も、年度によって「東京湾」と「内房」を分けたり分けなかったりしている。

新しい取り組みも

地図
© koka-G
千葉県富津市〜鋸南町にかけての主な漁港

保田漁協は95年、新鮮な魚介類を一般のお客さんに食べてもらおうと直営の飲食・物販店をオープンした。現在では温泉(人工泉)も併設、休日には団体客を乗せたバスが止まり、年間40万人が訪れる「観光名所」になっている。同漁協関係者は「高齢化で漁業者が減る中、漁協の将来を考えると、卸売市場の運営からくる手数料だけに依存できない」という。定置網の見学や漁業体験など、イベントのアイデアも盛りだくさんだ。

「安心・安全で身近な千葉の水産物を、もっとPRしなければ」。千葉県水産課は06年6月、「千葉ブランド水産物」の認定制度を始めた。初年度には加工品を含め8品目が選ばれ、認定マークを付けて流通・販売されている。この夏には「千葉の海・満喫キャンペーン」として、漁協の直販所と観光名所を組み合わせたマップを都内で配布した。いずれも東京からの近さを武器に、漁業と観光を結びつける試みだ。

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