「雪国」「千羽鶴」「伊豆の踊子」「古都」などの作家、川端康成氏がノーべル文学賞を授賞されることになった。日本人として初めて、東洋人としては1913年に受賞したタゴール(インド)についで2人目。
川端氏の授賞は、日本人の心の精髄を、すぐれた感受性をもって表現、世界の人々に深い感銘を与えたためとされている。奈良、平安の時代からつづく、伝統ある日本文学が、現代においても世界的水準にあることが認められたわけだ。これまで日本人のノーベル賞受賞者は、1949年度物理学賞の湯川秀樹京大教授、1965年度同賞の朝永振一郎前東京教育大教授である。
◇
紺の和服を着た川端さんは口数がきわめて少なかった。2、30本もつき出されたマイクの前でつぶやくように答えた。「候補になっただけで十分だったのに」「なにしろ日本語なので外国人にはどうかと……」
その合間に電話に呼び出される。「ハイ、ありがとうございます」といつもと変わらぬ口調で、折り目正しく受け答えしている。受話器を置くと、待ちかねたベルがまた鳴る。
赤いバラをかかえて石原慎太郎さんも訪れたが、かんじんの川端さんがどこにいるのかわからない。「僕の写真をとっても仕方がないでしょう。どこにいるの川端さんは」
縁側にまで本が積まれている川端さんの広い家も、この夜だけは文字通り足の踏み場もなくなった。
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