
第11回冬季五輪札幌大会第4日目の70メートル級ジャンプで、日本が3位までを独占するという大勝利をおさめた。優勝笠谷幸生、2位金野昭次、3位青地清二。日本が最も恐れていたモルク(ノルウェー)は4位。5位は前回大会でこの種目優勝のラスカ(チェコ)、6位はフォルトナ(ポーランド)だった。日本が過去の冬季大会で得たメダルは、1956年コルチナ・ダンベッツオ大会で猪谷千春がとった「銀」だけ。
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想像もできなかった三つの日の丸があがっていく。メダルをかけた胸をはり、国旗をじっとみつめ、「君が代」に聞き入る笠谷、金野、青地。いつの五輪でも、ある程度期待された日本ジャンプ陣だが、入賞したことすらなかった。空前の快挙。
競技が始まり、金野、青地が飛んでいく。「ウォー」という歓声。80メートルラインを越えるごとに、「いった、いった」と拍手がわく。
やがて45番の笠谷。だれもが長さ103メートルの助走路の一点を見つめた。助走路のずっと上方、空との境のあたりから、豆粒ほどの人影がすべり出た。弾丸のようにくだって来る。小さく、小さく丸めた五体。踏切台のかげに姿が消えたと思った瞬間、赤いユニホーム姿が飛鳥のように空に舞い上がった。
勝負を決める2回目。ランディングバーンの固められた雪が金属のように光った。金野、青地は前回に続き好調だった。が、1回目が不調だったとはいえ、やはり笠谷にとっては、彼の直前に飛ぶモルクが不気味だったろう。しかし、モルクの「一発」も起死回生のものではなかった。特別席のノルウェー応援席からため息がもれた。
次に再び笠谷。とび終わったモルクは、アウトランのわきから宿敵の姿をくい入るように見た。が、笠谷は2回目もあざやかなジャンプを見せた。すべてが、ここで決まった。滑走しながら両手をあげ、手をたたく笠谷。笑っていた。この日初めて見せた笑いだった。ほおが紅潮していた。
笠谷を真ん中に青地、金野、藤沢がインタビュー台に上がった。笠谷はぎゅっとくちびるをかみ、下を向く。こみ上げる喜びの涙をこらえるが、それはあふれた。4人は高く手をとり合い、前後左右の観衆にあいさつした。
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