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1976年モントリオール大会


1976年のニュース

田中角栄前首相を逮捕 ロッキード事件


写真
東京地検から東京拘置所に向かう田中前首相(中央)。得意のポーズを崩さなかった

ロッキード事件を捜査中の東京地検捜査本部は27日早朝、田中角栄前首相(58)=新潟3区選出自民党代議士=に対し、外為法違反の疑いで、東京・霞ヶ関の検察合同庁舎に任意同行を求め、取り調べの後、午前8時50分、同容疑で逮捕状を執行。身柄を東京拘置所に移すとともに、私邸と田中事務所など5カ所を捜索した。田中前首相は、73年8月ごろから74年2月ごろまでの間、計4回にわたり、桧山広丸紅前会長(66)=外為法違反容疑で逮捕=らを通じ、ロッキード社から「ピーナツ」「ピーシズ」各領収証に見合う計5億円の現金を受け取った疑い。

    ◇

「その朝」は突然、かつて権力の代名詞だった「目白」にやってきた。

午前6時半。東京・目白台の田中前首相の豪邸に、東京地検の検事らが着いた。「東京地検です」

早起きの田中前首相はすでに起きていた。ネクタイもきちんと結んでいたという。検事らに付き添われて私邸を出発。行き先はいつもの砂防会館でもなければ好きなゴルフ場でもない。東京地検である。

7時27分。霞ヶ関の検察合同庁舎へ。地検の黒い乗用車から降りた田中前首相は、紺の背広、白シャツに水色のしまのネクタイも、普段と変わらない。正面玄関までのタタキを十数歩、相変わらずのせかせかした足取りで、報道陣に右手を軽く上げた。が、「角さん」らしさはそこまでだった。やはり心の揺れが忘れさせたのか、左手でせわしく動かすあの扇子が、今日はなかった。

9時35分、田中前首相は東京拘置所に向かうため合同庁舎を出た。エレベーターを降りて玄関へ向かう途中、報道陣に「ひとこと」と声をかけられた。それでも、首を横に振るだけ。もはや、笑みを浮かべようという努力すらしなかった。口を一文字に結んだまま、じっと前方を見つめて、一歩一歩踏みしめるように玄関から車へ向かう。車へ乗り込む直前、間近でたかれる報道陣のフラッシュの音も聞こえないかのように、ふと空を見上げた。遠くを見る目つきをした。

かつて「一国の宰相」だった男の胸に、去来するのは何なのだろうか。車に乗り込むと、すぐ腕を組み、目を閉じた。

    ◇

(1976年7月27日)

  ※76年7月27日付の朝日新聞夕刊ほかの記事をもとにしました。本文中の呼称は「前首相」に統一しました。田中元首相はその後、受託収賄などの罪で起訴され、83年10月に東京地裁で懲役4年の実刑判決。87年7月には東京高裁で控訴が棄却され、上告中の93年12月16日に死去しました。77年の初公判から16年にわたった裁判は、本人の死亡による公訴棄却で幕を閉じました。

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