パキスタンのカーン大統領代行は12月1日夜、さきの総選挙で第1党になったパキスタン人民党(PPP)総裁のベナジル・ブット女史(35)を次期首相に指名した。同女史は2日にも新たに選ばれた国民議会(下院)の信任を得て新政権が発足する運びだ。PPPが政権を握るのは、77年7月に女史の父親ズルフィカル・アリ・ブット首相がハク前大統領(当時は陸軍参謀長)のクーデターで権力の座を追われて以来、11年ぶり。女性政権の誕生はアジアで4番目、イスラム教国では初めてである。
また、カーン大統領代行はハク前大統領の死後、設立された緊急評議会を解散し、非常事態も解除することを明らかにした。
PPPは先月16日に行われた総選挙で、214の選挙議席のうち92議席を確保、保守連合・イスラム民主同盟(IDA)に40議席近い差をつけて第1党になった。しかし、過半数に届かなかったため、多数派工作を進めて中立系政党などとの提携に成功、カーン大統領代行に首相指名を迫っていた。
ブット新政権は当面、急激な政策転換は避け、国内の安定を保つことに全力を挙げるとみられている。しかし、ハク前政権を支えてきた軍部内には、PPPへの抜き難い不信感がある。また、財界や官僚の間には旧政権時代の急進的な政策による経済混乱の記憶があり、原理主義派のイスラム教徒は前政権のイスラム化政策が後退するのではないかと警戒している。
したがって、軍部に対してはアフガニスタンの反政府ゲリラ支援や核開発計画の継続を約束するとともに、政府支出の34%が防衛費だという事実にも目をつぶらざるを得まい。また自由主義経済の維持、イスラム教の尊重を強調して社会不安の芽を摘み、軍部に干渉の口実を与えないようにしながら、政権の基盤を固めようとするだろう。
問題は経済の動向だ。パキスタン経済は多額の財政赤字を抱えながらも、平均6.5%の成長率を維持してきた。しかし、ここ1、2年は年間30億ドルにものぼっていた出稼ぎ労働者からの送金が石油不況のあおりで激減、さらに対外債務の増大などから経済にかげりが出てきている。財政赤字の解消には早晩、国民所得の4分の1にも相当すると推定される農業課税に踏みきらなければならないが、選挙に勝つために多数の地主層を抱えこんだPPPにそれができるかどうか。暮らしが傾くとき、旧政権時代の悪夢がよみがえり、国民はPPPに背を向ける恐れがある。
対外関係では、米国、英国、日本など西側諸国との関係を重視している。ブット女史は「経済発展では日本を手本にしたい」といっており、日本の援助への期待は大きいようだ。
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