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柔道
井上、磐石の金 亡き母に捧げた「全試合一本」 |
シドニー五輪第7日は21日、19競技が行われ、日本勢は柔道男子100キロ級の井上康生(東海大)が金メダルを獲得した。井上は初戦の2回戦から5試合すべてに一本勝ちする圧倒的な強さで頂点に立った。
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何度も、何度も、握ったこぶしを突き上げた。「一番」を示すように、人さし指一本を立てて観客席に向けた。「去年の世界選手権は、母が勝たせてくれた。だから、今度は僕の力で母を金メダリストにしたかった」
表彰台に、母・かず子さんの遺影を抱いて上がった。「世界一の母を見せたい」。そんな気持ちがそうさせた。優しさと厳しさを併せ持った母だった。
5歳から始めた柔道。警察官の父から手ほどきを受け、クタクタになったとき、いつも笑顔で迎えてくれた。一方で、3人兄弟の末っ子は、人見知りする恥ずかしがり屋。下を向いて歩くのがくせだった。そんな時は「男の子は、もっと堂々と胸を張りなさい」としかられた。
高校は宮崎市から神奈川・東海大相模高へ柔道留学、「世界の山下」にあこがれ東海大へと進んだ。帰郷したとき、サングラスをしていた。「顔を隠すような小さな人間になってどうするの。大きな人間になりなさい」。こっぴどく怒られた。
その母が、昨年6月に急性くも膜下出血で急死した。51歳だった。10月、初めての世界選手権には、悲しみを引きずったまま臨んだ。気持ちが集中できず、技もバラバラの状態だったが、優勝。「かず子」と刺しゅうした帯に感謝し、「母が勝たせてくれた」と人目もはばからず泣いた。
あれから11カ月。「母が亡くなってから康生は変わった」と兄の智和さん(24)は言う。「街を歩くときも堂々と胸を張って歩いている」。そして、今度は自らの力で、五輪の金メダルを取る姿を天国に届けると誓ってシドニーにきた。
開会式では、日本選手団の旗手を務めた。そして、この日。鮮やかな一本勝ちの連続で勝ち進む。決勝も、組んだ瞬間の内またであっさりと世界選手権に続く世界の頂点に立った。帯には世界選手権と同じように母の名があった。母にささげた金メダルは、22歳の「独り立ち」宣言でもあった。
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