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内風呂から雑木林

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編集部現地レポート

時、忘れる静けさ

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フロントのある本館からつながるセレクトショップ。陶器のほか、風呂場で使えるシャンプーなど厳選された品々が並ぶ

「亀の井別荘」「由布院 玉の湯」とともに「由布院御三家」と呼ばれる。創業は1992年で、歴史は浅い。オーナーはもともと日田市で喫茶店を営んでいた。古い建物を探し出し、測量して解体する。材料を運び、設計図を引き直して新しい空間をつくるのに1年かかる。離れ6棟でスタートし、8棟、12棟と増やしてきた。

「サービスは、折り目正しく、出過ぎぬこと。客室は、広く、清潔で、居心地よいこと」がモットーだ。これ以上、離れを増やすつもりはないという。サービスが行き届かなくなることをなにより懸念している。

離れで夕朝食を取ることもできるが、本館には個室の食事処が用意されている。本館からつながる「Tan’s Bar」は午前9時から午後11時まで。泊まらず、本館の食事処とバーを利用する客も少なくない。オーナーは、融資先の銀行から「なぜ、バーなのか。これだけの面積があれば、露天風呂ができるのでは」と言われたという。だが、露天風呂はつくらなかった。

雰囲気のあるバーだ。食前酒を注文すると、「黒文字マティーニ」を出してくれた。黒文字という樹木を吸わせたウオッカがベースになっている。ドライで、独特の木の香りがする。

無量塔の「無量」は、仏教の用語で「はかりしれない」。塔は建物のシンボルという意味があり、その中核をなすのがTan’s Barだ。Tanは「淡」。オーナーの出身地・日田市に、かつて広瀬淡窓という人の私塾があり、向学心のある生徒たちのことを地元の人々は「淡な人」と呼んだという。そんな人たちに集まってもらう場所をつくりたい。それは露天風呂ではなかったのである。

客の半分は、大分、福岡、大阪からやってくる。残り半分は全国から。毎日、離れのひとつに東京からの客がいて、もうひとつにはここに魅せられたリピーターがいる。50代、60代の夫婦が圧倒的に多く、新婚旅行でやってくるカップルもいる。

1週間滞在する客も珍しくない。和食にあきた人たちのためにイタリアンレストランも用意された。図書室も備え、CDやDVDの貸し出しなど、長期滞在者への配慮も怠らない。ここでは、時間の流れ方が違うのだろう。1週間もあっという間に過ぎてしまうのかも知れない。

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92年の創業時に作られたメインバー。築14年とは思わせない雰囲気が漂う。サマセット・モームが愛用したシンガポールのラッフルズ・ホテルのバーを思い出す
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図書室から続く談話室。11月でも、熱いココアを飲みながらの、外の陽だまりでの読書は格別だった。
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12棟の離れには、洋間と和室が用意されている。テーブルや家具の1点1点にオーナーのこだわりが感じられる
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