

JR天橋立駅近くのリフトに乗っておよそ5分、山上にある天橋立ビューランドから見下ろす天橋立のなんとも優雅な姿に、たまった疲れが一枚一枚はがれてゆく。青い空に真っ白い雲。波頭をおだやかにたてて遊覧船がのんびりと湾内を走る。さあ、股(また)のぞき。えいっと掛け声をかけて股の間から、逆さの天橋立を見る。右手の突端に立つのが、きょうの宿、松露亭だ(「どらく」編集長 小野高道)


貴重な高野槙(こうやまき)でこしらえた浴槽に身をとっぷりと沈める。やさしい木の香りとちょっぴり刺激のある熱めの湯が、体の芯(しん)まで包み込んでゆく。大浴場「知恵の温泉」の泉質はラジウム・鉄・ナトリウム・塩化物泉。支配人の下野(かばた)裕さんによると、美肌の湯ともいわれているそうだ。露天風呂に移る。こちらは石造りで、竹床に寝そべって休むこともできる。静寂。湯の流れ出る音しか聞こえない。
風呂上り、大浴場前の廊下に出て部屋に向かう。北山丸太で作られた凹凸のある廊下が、ふやけた足裏のつぼを刺激する。これがなんとも気持ちいい。
天橋立温泉は7年前に湧出(ゆうしゅつ)したばかりだ。夏は海水浴客でにぎわうが、冬場は閑古鳥が鳴き、車でおよそ1時間半離れた城崎温泉に宿泊・観光客が流れてしまっていたという。城崎は温泉とカニが魅力で、まちを挙げて観光客誘致に力を入れていた。こちら天橋立は、脂を上手に抜いた鰤(ぶり)のしゃぶしゃぶが名物だったが、「温泉」という武器がなかった。カニはとれるが、それを夕餉(ゆうげ)に出すだけでは城崎に勝てない。温泉がそろってこそ「食」と「癒」の相乗効果が生まれる。
そこで、天橋立地区の旅館・ホテルなどが共同して出資し、温泉を掘り当てたのだ。硬い岩盤のため、地下1500メートルも掘り下げ、湧出するまでに4カ月もかかったという。下野さんは、「日本三景という最高の景色に、温泉とカニが加わり、鬼に金棒になったと言われました」と言葉にも力が入る。
日本海に温泉が出た――温泉ブームも手伝って、天橋立は「立ち寄り観光地」から「宿泊観光地」へと変貌(へんぼう)を遂げた。


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