
クエの魅力はなんといっても味にある。あまり動き回る魚ではないので、しっかりとアブラがのっており、鍋や刺身で食べると絶品だ。旬は秋から冬。焼いても、煮付けても、揚げてもおいしい。さらに、プロの目から見ると、身が硬く、身持ちがいいことも大きな魅力となる。魚なのでもちろん鮮度は大切だ。しかし生け締めしてすぐ食べるより、2、3日たったほうがおいしいというのがクエの特徴だ。アブラが出てきて身質がおいしく変化する。したがって、たとえば年末年始にハイシーズンを迎える旅館では、正月明けまで使える非常に便利な魚となる。また、技術のある料理人にとっては、余すところなく何もかも食べられる食材というのも魅力となる。内蔵やうろこはもちろん、「えら」を食べることが出来るのは、アンコウとクエぐらいではないだろうか。
藤田さんはかつて、クエを売っていても食べたことはなかった。初めてクエを売ったのは20数年前だが、自分で食べたのは15年前。売るばかりで食べなかったのは、あまりにも値段が高かったから。切り身にして売るといったスタイルはなかったため、とても手が出なかったという。

クエを長く扱ってきた藤田さん。今まで一番思い出に残るエピソードは1980年代から始まったバブル経済期に経験した失敗だ。なんと50〜60キロ級のクエを8本ほしいという注文が入った。お金はいくらでも払うという豪気な注文だ。しかし、とれない。どうしても2、3本しかそろえることができない。困っていたところに熊本の業者から、中国沿岸で大型のクエがとれているという情報が入った。すぐに輸入したが、実際にものを見てみると、臭いが強くて使い物にならない。鍋ならまだしも、刺身では商品にならないものだった。結局格安で得意先に納めることになり、大もうけどころか大損する羽目になってしまったという。「モノがよければお金はいくらでも出す」というようなお客様は、逆に悪いモノだとどんなに安くてもだめなのだ、というのが教訓になっている。


プロフィール
1959年生まれ。大学紛争中に休講が相次ぎ暇なので、市場でアルバイトをしたのが業界に入るきっかけ。在学したまま老舗(しにせ)企業の二代目が始めた企業に就職。1986年に藤田水産として独立。 将来は南の島に移住して、釣りとゴルフをするのが夢。

※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。