「環境への意識に変化はありますか?」。こう聞かれて、いつもお答えするのは、10年前を思えば…ということだ。
10年前。たとえば1996年は、橋本内閣が発足した年で、記憶に残る事件としてはペルーでの人質事件があった。それでも記憶があやふやな人には、阪神大震災や地下鉄サリン事件から1年が経過した年といえば、少し実感がわくだろうか。周防正行監督の「Shall we Dance?」が公開されたのもこの年だ。商用インターネットは産声を上げたばかりで、まだナローバンドの時代。Googleが起業するのは1998年のことだから、それよりも数年前のこと。京都議定書が決議された地球温暖化京都会議は1年後の1997年の開催。そう考えると、10年というのは思ったより長い時間のことのような気がする。このころ、既に地球温暖化は着々と進行していたはずだが、読者の皆さんは環境問題についてどれほど意識していただろうか。
翻(ひるがえ)って今年2006年を考えると、企業は、CSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)を強く意識するようになり、環境対応から情報公開、法令遵守に至るまで、営利一辺倒ではなく新たなモノサシで評価される時代になった。企業の広告ではエコという言葉が花盛りだ。グリーン購入法、リサイクル法、NPO法人法なども改善の余地はありつつも、ともかく法制化された。
現象面でも、1998年のエルニーニョからはじまり、2003年のヨーロッパ熱波、2005年のハリケーン・カトリーナなど気候変動を実感するような現象が続けて起きた。授業で環境問題を教えない学校はないだろうし、新聞やテレビで環境問題が取り上げられる機会は増えている(この企画のように、朝日新聞のウェブサイトで正面から取り上げるようにもなった!)。京都議定書は2005年に発効し、環境省は「チーム・マイナス6%」キャンペーンを大々的に始めている。
京都議定書から離脱したアメリカでも、ゴア元副大統領が地球温暖化に警告を発する映画「An Inconvenient Truth」(邦題:不都合な真実)が大ヒットして、日本でも2007年の正月映画として見ることができる(これは地球温暖化を1時間半で理解することができるスバラシイ映画で、是非お薦めです)。ハリウッドのセレブたちがアカデミー賞の授賞式にハイブリッドカーで乗りつける時代、エコを意識している人は「まじめで融通がきかない」というイメージから、「ちょっとかっこいい」ということになってきている。環境への意識は、大きく変りはじめていると言ってもいいのではないだろうか。
その一方で、人口は増え続け(過去10年で7億人増えた!)、消費文明は世界の資源を食い尽くさんとしている。世界全体の経済を考えなければ、環境問題の真の解決はなさそうだ。
地球温暖化の問題は、単にエアコンの温度を2度下げたり、ゴミを分別したりすれば解決するだけではなく、今後の人と自然の関係を問いかける深く、広いところに繋(つな)がっている。究極的に幸福とは何かを問いかける問題かもしれない。
読者の方から「地球環境がこのまま推移すれば、将来必ず自然界からの反撃の狼煙(のろし)があがり人類の存亡に関わることが予想されて震撼とする」という感想をいただいた。いざ自然が猛威をふるえば、私たちはあっと言うまにねじ伏せられてしまう。「地球に優しい生活をしよう」というスローガンだけでは空虚だ。自然に畏怖(いふ)し、日々の糧に感謝しながら、私たちが何に依存して生きているかということを深く考える必要があるだろう。
「気候変動+2℃」でも紹介しているが、既にそうした活動の芽もたくさん出てきている。ネガティブなことばかり考えていると気が滅入ってくるので、10年間でこれだけの変化があったのだから、100年後はきっと大丈夫。そう思って今を行動するしかない、と思う。
上田壮一
Think the Earthプロジェクト プロデューサー
「気候変動+2℃」編集ディレクター
Think the Earthプロジェクトは2001年2月に発足。「エコロジーとエコノミーの共存」をテーマに、「地球や世界について考え、学ぶきっかけづくり」を行っている非営利プロジェクトです。これまでに地球儀型腕時計「wn-1」、写真集「百年の愚行」、書籍「1秒の世界」、「世界を変えるお金の使い方」、「えこよみ」、携帯アプリケーション[live earth]など、数々のソーシャル・プロジェクトを世に送り出してきました。また、企業とNPOを結ぶセミナーを開催し、日英バイリンガルのウェブサイトやメールニュースで、地球に関する先進的な情報を発信するなど、活動は多岐にわたっています。
Think the Earthプロジェクト 公式サイト
今回、年代ナビゲーションに対応させて掲載している各年の「地球の姿」は、「気候変動+2℃」に収録されている温暖化シミュレーションの一部です。
地球の平均気温が工業化以前に比べて2℃上昇すると、気候変動による人間社会へのリスクが急激に増大すると言われています。本書は国立環境研究所の協力により、1950年〜2100年までの温暖化シミュレーションをフリップブック形式で掲載。パラパラめくると、わずか150年の間に地球が温暖化していく様子が手に取るようにわかります。私たちは今、未来を選択する分かれ道に立っているのです。「地球温暖化」という言葉は誰もが知っています。本書は、その言葉をただ鵜呑みにするだけで終わってしまわないために、皆が自分のこととしてこの問題を考え、行動するための本として誕生しました。(責任編集:山本良一 編集:Think the Earthプロジェクト ダイヤモンド社刊)
「気候変動+2℃」 ホームページ

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