いよいよ冬本番。昔から日本人は、お風呂で身体を洗うことより、ゆったりと入ることを楽しんできた。お風呂で身体を芯から温めれば、長時間ポカポカして暖房の温度も下げられるはず。帰宅後の入浴が何よりも楽しみという人も多いだろう。そこで、健康にもエコライフにも良い入浴方法について、冷え性治療を専門とする目黒西口クリニックの南雲久美子院長に聞いた。
冬の入浴と聞いて浮かぶ、冬至の柚子(ゆず)湯。冬至は湯につかって病を治す湯治(とうじ)にかけられて、柚子湯に入ると「風邪をひかない」という言い伝えがあるところも多い。
柚子には疲れを取るクエン酸や風邪の予防にもなるビタミンC、肌をなめらかにするペクチンなどが含まれているので、「冬至に柚子湯」は、単なる縁起かつぎとも言い切れなさそうだ。しかし、南雲先生は「成分がお湯で薄まってしまうので、皮膚からの浸透による効果は不明です。むしろアロマ(芳香)効果の方が高いのではないでしょうか」と話す。
柚子の香りで気持ちがリラックスし、交感神経優位から副交感神経優位へと、自律神経のモードが切り替わって、血管が拡張。血液の流れが良くなって、手足が温まるというわけだ。夜が最も長い日に、香りのよいお風呂をゆったりと楽しみ、身体を温める――昔の人の生活の知恵だ。
柚子湯と並んで、薬湯(やくとう)として親しまれてきたのが、春先のヨモギ湯や、初夏のドクダミ湯。ヨモギは艾葉(ガイヨウ)、ドクダミは十薬という名のれっきとした生薬(しょうやく)だが、ヨモギはシオネールやツヨンという油成分が含まれていて、服用すると血行を整える。昔から民間薬として、傷口の治療などに使われてきたドクダミも、複数の精油が含まれている。夏場にドクダミを採取して、乾燥させたものを入浴剤に使うと、皮膚病に効果があるといわれる。
南雲先生によると、皮膚からの成分の吸収より、香りによって副交感神経が強く働くアロマ効果の方が、大きいとのこと。
冷え性で悩んだ経験がある南雲先生は、市販の入浴剤はもとより、漢方薬や塩、酢などもお風呂に入れて使ってみたそうだ。
「結論として、何が入浴剤として適しているかは、感覚次第。入った時に気持ちが良い、リラックスできると感じるものは、体質に合っているのです。自分の体質に合った漢方薬が、おいしいと感じるのと同じですね」と語る。
牛乳や日本酒、重曹なども入浴剤に使えるが、それが自分に向いているかどうかは、自分の身体に聞いてみよう。
入浴にはこうしたいろいろな効果が期待できるが、やはり大切なのは、身体を内部までじっくり温めること。特に現代の日本人は、食生活や生活習慣の変化で冷え性が増えていると言われており、なおさら効果的に入浴したいものだ。
「冷え性」というと、女性特有の症状のように思われがちだが、男性にも少なくない。南雲先生の臨床経験では、女性と男性では冷え性の表れ方が全く違うそうだ。
「女性の場合、20代のころは血のめぐりが悪くて、心臓から遠い手足が冷えます。30代になると内臓が冷えるようになり、頻尿や膀胱(ぼうこう)炎、下痢、めまいなどの症状として表れます。このころ、お風呂に入るのがなんとなく苦手になる人が多くなります。40代、50代になると、自律神経が乱れ、顔がほてるのに身体が冷えて、いわゆる更年期症状が出てきます。更年期が終わると、老化とともに、また冷えてきます」。
若いころとは冷える場所が変わるので、「冷え性が治ったかな?」と勘違いしやすい。めまいや頭痛、肩こりなどの不定愁訴に悩まされている女性は、一度、冷え性を疑ってみては。
一方、男性は体質に左右されがちなので、女性のような経過はたどらない。「生まれつき胃腸の弱い人やストレスを抱えこみやすい人は、比較的、早い時期から冷えを訴えます。でも、50代を過ぎると代謝が弱まるので、どんな人も女性と同じように、冷えを感じるようになりますね」。
結局、冷えから逃げられない宿命ならば毎日の入浴で、予防したい。
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